岩手県 宮古市立千徳小学校
学年に応じた図書の配置で「読書」を育む

所在地:〒027-0041 宮古市西ケ丘一丁目2-1
電話 :0193-62-3934
設立 :昭和59年4月(旧千徳小学校と近内小学校を統合)
児童数 467名 学級数:18学級 教職員数:40名
図書支援員:1名(西中学校と兼務)(平成28年1月22日現在)
教育目標

(学びのフェスト2015)
思いやりのある子:周りとうまくかかわりながら生活すること
進んで学ぶ子 :学習内容の確実な定着を図ること。
健康な子 :自ら進んで心身をきたえること。
図書教育では、
「学年ごとの読書冊数目標を向かって取り組む」
お話をいただいた校長先生(上)と
北田先生(下中央)、小笠原先生(下左)、中村先生(下右)

図書館基本情報
2016年1月末

特徴
支える人たち
図書教育に熱心な地域である。先生方をはじめとする学校関係者、ボランティア、市の教育委員会、市立図書館などが「つながり」を持って、学校図書館を支えている。また、ピエロに扮してユニークな読書推進活動を行っている佐藤先生(現 岩手県立生涯学習推進センター勤務)の存在も大きい。関係者の間では「超・有名人」であり、宮古西中学から異動された後も、「読書の伝道師」として活動を続けれられている。
取材後、西中学校の先生にも取材を行ったが、図書教育面で「中1ギャップ」を感じることなく中学生もよく読書するとのこと。また、生徒同士で「読み聞かせ」も行っており、中学校生になっても「読書の心」がしっかり身についている。読書教育面で「小中一貫教育」を感じさせる。
宮古市は平成23年度から順次、読書支援員を各校に配属。平成27年度でほぼ配属を完了している。読書支援員の中村先生が小学校と中学校をつないでおり、月・木・金が小学校、火・水が中学校勤務である。
資料
蔵書数は12,000冊程度で推移しており、ほぼ国の学校図書標準と同等である。しかしながら、年間貸出冊数は蔵書数のおおよそ三倍強。驚異的でもあり、「読書熱」が数値として表れている。
国や県、市の社会・歴史に関わる資料、災害(つなみ)に関わる資料等がバランスよく配架されている。また、郷土にゆかりのある作家なども取りそろえられている。
おすすめ本のコーナーには先生の選書によるコーナーと学校司書(読書支援員)さんの選書によるコーナーがあり、「選書」が大切にされている。(大手の出版社が図書の選定を行っているが、先生方が最終的に選書を行っている。)
郷土教育用の副読本「わたしたちの宮古」は本年度改訂され、最新の宮古を著している。
図書室の環境
それぞれの学級、学年に応じて三タイプの図書室(コーナー)がある。
それぞれの学級には専用の「とくとくブックス」と呼ばれるコーナーがあり、自由に読書ができる。また、児童一人ひとりの読書ファイルには読書履歴や書評が記録されている。低学年(1年生~2年生)にはクローズ型の「ゆめランド」と呼ばれる図書室があり、きれいなポップや掲示物、畳のコーナ等でリラックスした環境で利用がされている。高学年(3年生~6年生)には「銀河ラウンジ」と呼ばれるオープン型の図書室が設けられている。NDCの分類でシステム化(バーコード化)がなされ、図書委員によって運営がなされている。また、調べ学習用としてテーブルや椅子が多く配置されており、実務的なつくりとなっている。
学校図書館を支える市立図書館の活動も見逃せない。読書感想文コンクールの開催とその出版、相互貸借による蔵書の実質的な充実、専門員による選書アドバイスや様々なデータの可視化、移動図書館の利用促進など、随所に表れている。
取材当日は年二回の読書週間に当たっていた。図書室中央には赤い「おはなしゆうびんポスト」がおかれ、子供たち自らが相互に利用する「おすすめ本」の投函が書評付きで行われていた。「なるほど!!」と感心した。
「学校間での蔵書検索と相互貸借の実施」や「様々な出版社からの図書購入を可能とすること」などの要望も聞かれた。
図書室紹介

学級毎に専用の図書コーナーがある。
定期的に市立図書館から貸出、配本される。


子供たちがリラックスして利用できるよう配架されている。
ポップや掲示物も色合い豊かで明るい雰囲気。
畳のコーナーもある。

地域ボランティア(ブックマザーズ)が月2回、月曜日の朝に
読み聞かせを行っている。
(写真提供:千徳小学校)

読書週間(年2回、2週間)に登場。子供たちがおすす

震災コーナや県・宮古市に関連する資料なども配架している。

市立図書館が主催している読書感想文コンクールの発表資料も刊行され、配架されている。

先生が選書されたコーナーと学校図書支援員さんが選書されたコーナーの二つがある。

授業で使用されている副読本で、定期的に改訂されている。
千徳小学校からのお勧め本
No | 図書名 | 著作者 | レコメンド | 主な対象学年 |
---|---|---|---|---|
1 | はたらく自動車ずかん | 高島鎮雄 | ちょっと変わったはたらきの自動車で子供たちの興味もわく。 子供たちが迷わずに調べ学習ができる。 | 1年生 |
2 | ふたりはシリーズ | アーノルド・ カーベルト | 「ふたりはともだち」の学習の並行読書 | 2年生 |
3 | 身近なたべものの ひみつシリーズ | 学研プラス | 「すがたをかえる大豆」の学習に大活躍 | 3年生 |
4 | 学校のバリアフリー | 小峰和雄 | 学校という子どもにとって最も身近なバリアフリーが分かる良本。 | 4年生 |
5 | 星野道夫とみた風景 | 星野道夫 | 星野道夫という人生をみることができる。教科書とも関連している。 | 6年生 |
6 | 13歳のハローワーク | 村上龍 | 仕事の種類が分かりやすい。総合で学習に便利。 | 6年生 |
取材後記
今回は千徳小学校をメインに取材したが、筆者は中学校の関係性にも興味を持っている。中学校教育への継続性で「中一ギャップ」などの言葉も耳にするが、地域で連携した小中教育によってはこのギャップを最小限にとどめることができるのではないか。
高学年用の図書室「銀河ラウンジ」は一階からストレートに階段を駆け上がる。図書室も数段の階段構造。「知育」と「体育」の両面が同時にはかられるユニークなつくり。校舎を設計した建築士さんにも敬意。(菅原)