岩手県 盛岡市立城南小学校

学年に応じた読書指導で読書力向上をめざす

所在地:〒020-0866 盛岡市若園町9-29

電話 :0191-623-2358
設立 :昭和26年9月
児童数:423名 学級数:18学級 教職員数:37名
学校司書:1名(他の一校と兼務)(平成28年2月26日現在)

教育目標

(学びのフェスト2015)
まごころをつくす子:豊かな情操と真心をもち、よりよい生活を築いていく子ども。
考える子  :確かな思考をもち、自ら学ぶ意欲的な子ども。
たくましい子:健康的な体と意思をもち、明るくたくましい子ども

お話をいただいた杉浦先生(司書教諭・写真上)と深見先生(学校司書・写真下)

図書館基本情報

特徴

支える人たち

司書教諭、学校司書、図書ボランティアの役割分担が明確で、それぞれの専門性をもって活動を行っている。

司書教諭

司書教諭の杉浦先生は図書館を総括されながら、学級担任も兼務。国は司書教諭の役割を「学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導、さらには、学校図書館の利用指導計画を立案し、実施の中心となるなど、学校図書館の運営・活用について中心的な役割を担う。」としているが、まさにその通りの活動をされている。読書推進の具体策である読書強化月間の方針が実に分かりやすい。6月は読書の「量」をすすめ、11月は読書の「質」で裏付ける。質も量もそのどちらも大切にしている。

学校司書

学校司書の深見先生は盛岡市職員。他の一校と兼任で隔週ごとに勤務している。図書の整備や新刊本の受け入れ・装丁、図書委員の補助や相 談、先生方の選書支援、インターネットでの蔵書検索や調査など、図書室運営面で中心的な役割を果たしている。盛岡市では現在8名の学校司書を各校に配属し ているが、司書の研修にも取り組んでおり、学校司書のスキルアップや情報共有を進めている。

ボランティア

ボランティアは読み聞かせを行う「お話ボランティア」(通称「ねこの手」会員約20名)と本の整理・修繕を行うボランティア(通称「こねこの手」会員約10名)が活動している。お話ボランティアは選書のスキルが高く、学校からの要望を咀嚼し、最適な選書をして読み聞かせを行っており、子供たちの支えとなっている。

資料

蔵書数は12,600冊であるが、年間貸出冊数が62,500冊もあり、図書の平均回転率が5.0で児童一人当たり140冊(一人当たり月12冊)。どのようにして高い読書率が維持されているか、司書教諭の杉浦先生に伺った。要約すると「先生方全員の継続的な読書指導」にある。授業や読書月間での具体的なおすすめ本の掲示。多くの子どもたちが同時期に読めるよう一書誌あたりまとまった冊数を用意。それぞれの学年の子供たちが手に取りやすいよう区分けされた配架などの工夫。子ども同士の読書会や親子読書会などの活動。国語教育の研究を続けてきた学校の方針。さまざまな背景が効果として表れている。

特設コーナーとして、「吉田文庫」がある。卒業生であった吉田良治さんが寄付された約2000冊の本で物語や辞典等がある。(詳細は城南小学校のホームページに記載されている)また、図書室入り口には新刊本コーナーが、「学年必読書30冊」を記したJセレ(Jは城南のJ、セレはセレクション)の掲示が廊下側にある。また、卒業生寄贈による「わかば文庫」(子どもたちの書評付き)もある。

調べ学習に用いられる図鑑も比較的多く配架されている。また、適切な蔵書が見当たらない場合は、インターネットを利用して市立図書館から貸出を受けている。

図書室の環境

図書室は3階に設置。配架や掲示は比較的シンプルで、どちらかといえば高学年向きの実務的なつくりである。また、多くのテーブル、椅子も設置されさまざま図鑑等を用いて、調べ学習の場としても利用ができる。

本年度、バーコード化を行い、2月よりパソコンでの処理を開始した。導入に要した期間はわずか2か月。多くの図書ボランティアやPTA関係者と学校司書さんの指導のもと、図書整理やバーコード貼付を終えている。(ノウハウがないと短期間では終わらない作業であり、立派)。運用は図書委員が中心。パソコンへの興味もあって、活動が一層活発化し、よいスタートが切れたとのこと。また、蔵書点検や検索、統計資料の作成等で先生方の負担軽減がされており、さまざまな研究をして高度利用を図ってほしい。

城南小学校は学校独自の施策として国語教育の研究成果を公開している。ホームページにも掲載されているので、参照願いたい。

図書室紹介

図書室の全景
昼休みに図書室に集まった子どもたち。
にぎやかで元気!!
「Jセレ(城南セレクションブックス)」掲示
図書室廊下側に掲示された学年ごとの必読書30冊。
「Jセレコーナ」配架
学年ごとに区分けされてきっちり配架されている。
ブックトラック
各学年のフロアーにはブックトラック(可動式)によってのおすすめ本が配架されている。
選書テーマに沿って学校司書さんが適切にセレクト。 
これとは別に学級文庫も配置されている。
お話し会(読み聞かせ)での紹介本コーナー
「ねこの手」は読み聞かせを行う図書ボランテイア
ここでも「学年」の表示がある。
授業と関連付けされた配架
学年ごとの区分けされた配架は徹底されている。
「吉田文庫」
学校の大先輩である吉田良治さんからの寄贈本コーナ・児童書を中心の約2000冊ある。
「わかば文庫」
卒業生からの寄贈本コーナー
2月から始まったパソコン処理の案内掲示
図書ボランティア、PTAのみなさんの協力で図書整理をし、
バーコード化を行って2か月で稼働した。
図書カウンターの様子
図書委員がパソコンを使って貸出・返却を行っている。
パソコンの利用は子供たちに大変な人気のようである。
(この日の貸出冊数はおおよそ450冊。)

城南小学校からのお勧め本

No 図書名 著作者 レコメンド 主な対象学年
1はたらくじどう車
スーパーずかん
小賀 野実図や写真が大きく、文章が平易で児童にとって理解しやすい工夫がされている。1年生
2わいわいあそび
どきどきしぜん
かがくのとも身近な生き物・自然について知識を増やし体験につなげられるように工夫されている。2年生
3食べ物のひみつ幕内 秀夫教科書の説明文と同じ要素(情報)があり、子どもの発展学習に利用しやすい。3年生
4さがしてみよう
まちのバリアフリー
髙橋 儀平カテゴリー別に分けられていて分かりやすい。4年生
5日本の職人
伝統のワザ
学研どの内容も同じステップに沿って紹介されており職種による差異なく調べることができる。5年生
6はじめてであう
絵画の本
アーネスト・ラボフ児童にとってなじみのない西洋画や画家について語りかけるような文体で易しく解説している。6年生

取材後記

盛岡市は原敬や金田一京助、石川啄木など、優れた先人を多く輩出しており、「盛岡の先人教育」を市内小中学校で実施している。(詳細は盛岡市教育委員会のホームページを参照)。戦中にあって総理大臣を務めた米内光政は(第37代総理大臣)ここ、城南小学校の卒業生である。同郷(奥州市出身)である斎藤実(第30代総理大臣)も同じ海軍出身であるが、取材の日と同じ2月26日に起きた「ニ・ニ六事件」で銃弾に倒れた。この日を境に近代・日本は急激に軍部主導に傾斜していく。
取材にあたって、学校のホームページを読ませて頂いている。城南小学校のホームページは充実しており、随時最新情報が登録されている。が、しかしアクセス数が少ない。小中学校のホームページはどこもアクセスが低く、いかにアクセス数を上げて「価値」を高めるかが運用上の課題となっている。今回の「元気な学校図書館」プロジェクトも間もなくサイト登録がされる。さまざまな工夫や知恵で多くの関係者に利用いただき、よき議論の場となるよう進めていきたい。(菅原)

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