秋田県東成瀬村立東成瀬中学校
学力トップクラスを支える東成瀬村の仕組み(4)
所在地:〒019-0801 秋田県雄勝郡東成瀬村田子内字上林18
電話 :0182-47-2155
HP:http://jhst.higashinaruse.com/
(写真提供 東成瀬村)
東成瀬中学校を訪問し、山崎校長、佐藤先生(図書館担当)に読書教育への取り組みについて幅広く説明頂いた。鶴飼教育長や鈴木教頭と一緒に、学校内のさまざまな活動成果を紹介頂いた。
インタビュー
佐藤:他の学校と比べてみて一番特徴的なのは、村全体で図書館を作っていただいていることです。週に一度、菊地さんに来ていただき、図書室のきめ細やかな管理をしていただいたり、授業の時必要な資料を学校の本だけではなくて、村の児童館から探していただいたり、広い範囲からサポートしていただけるところが、東成瀬中学校の特徴だと感じています。
それでは学校図書館の取り組みを説明させていただきます。一つ目は生徒会としてどのように活動を行っているかです。先ほどご覧いただいたとおり、中央委員会の生徒たちが中心となって、本の貸出等を行っています。通常、昼休みに15分間本の貸出を行っています。その他、新刊の紹介や先生方のお勧めの本を中央委員会の生徒が動いて、取材に回るなどして、「中央だより」を発行しています。中央委員会というのは、図書に関わることだけでなく、他の仕事も兼ねているので、あまり深い活動にはなっていませんが、出来る範囲で頑張っているところです。
二つ目は、「朝読書の推進」をあげております。月木金は、「朝読書」ということで、全校一斉に取り組んでいます。8時15分から30分までの15分間、話などせずに黙々と本に熱中している姿が見られます。本のジャンルについては、国語科としては、お勧めしたい本もありますが、今のところは、細かい指定はせずに、自分が興味を持ったところの本を選んでいます。生徒によっては自宅から持ってきたり、学校のものを借りたりして読んでいます。
今年度から学級文庫の方も充実させたいということで、菊地さんに選定の協力をいただき、今、各学年の発達段階に合った本を文庫として置いています。それで興味をもって手に取る生徒もいるので、これを機会に、本のジャンルも、広い視点で選べるようになっていって欲しいと考えています。
また、特徴的なのが、月に一度、地域の読み聞かせグループの方々においでいただいて、読み聞かせを行っていることです。こちらの読み聞かせは、保育園からずっと継続されているということで、聞く子供たちも、読んでいただくことに慣れているようです。
定着しているってことですね。
佐藤:はい、定着しています。絵本ですが食いついて見ています。小学校では、感想も発表していますので、中学校の一年生はその流れで自分たちで最後の挨拶をするときに感想を言うなど、心の底から本に対して色々な感情を持っているのが伝わってくるような感じです。
三つ目ですが、「授業との関わり」ということであげています。こちらの方は、まず教科書に沿った形で行っていますので、他の学校さんでも行われていることとは思いますが、まず、一年生では、お気に入りの本を紹介するということで、お店にあるポップの真似をして作るということを昨年度はやっています。実物の書籍もそれに合わせて購入していただくなどして、実際に紹介されたものを、手に取れるような環境を整えています。また、三学期には、自分の興味にそったテーマを決めて、図書館を自由に使ってポスターセッションに取り組みました。二年生では、「方言と共通語」という教材の時に、様々な地域の言葉に興味を持ってもらいたいということで、図書館を利用しました。三年生は、和歌の感想文を書く時に、ただ、その和歌を訳すだけではなくて、その和歌を作った作者自身の生い立ちやその時代背景なども調べられるように図書室で実施し、調べた事を感想文の中に組み込む・取り入れるように指導しています。
書いたものは廊下に掲示するようにして、お互いに「どういうことを調べたのかな?」とか「どういうことを感じたのかな?」ということが分かるようにしています。
最後は、図書館と連携しながら、授業の中でも色々と活用させていただいているということです。また、その月に合ったテーマでディスプレイしていただいています。今月は総体やコンクールが近いということで、部活の本を特集したり、廊下にレイアウトして紹介しています。
その他、資料の中で図書活動に関するデータということでは図書冊数と読書率等を紹介しているのですが、村から毎年50万円の予算をいただいているおかげで、毎年新しい本をかなり多く購入させていただいています。現在の図書冊数は、6370冊ということで、ちょっと古くなった本は、廃棄していますが、充実した内容になっています。蔵書率の方も三学級ということで、現在27年度の年度末で117%達成している状況です。
読み聞かせの内容は小学校等と違うんですか?読んでいる本の内容は?
佐藤:少々違いますね。やはり。
中学生向けのものを各自選んでいらっしゃる?さっき、絵本とかおっしゃっていましたが、それは小さい子ども向けですよね。
佐藤:絵本の中でも意味のあるボリュームのある本を選んでいます。毎回テーマを決めて、持ってきていただいています。
絵本は中学生も読んだ方がいいですね。小学生の時に、お母さんから読んでもらった時の印象と、中学生になって読むときの印象は違いますし。名作の絵本を。絵本なんかは何回も読めとよく言われています。小さいころ読んでもらったものを、自分がちょっと大人になった時に読む。そして自分がお母さんになった時に読む。そして、ほんとに死ぬ前に読む。4回ぐらい読む。読む時期によりテーマが変わっていくんだそうです。
佐藤:また、これを活用して日本語と英語のコラボもやっています。
それはいいですね。いきなり長文の英語を読むというのは、さすがに中学生にとって厳しいかな?と思いますから、詩とか絵本とかを英語で聞くと、日本語を聞いているとわかり易いですね。表紙の絵を描かせて、そこに短いコメントを書かせて、それを本の横に置くという、それを課題にしてるんですね。
佐藤:はい、去年から始めました。文化祭でも展示しました。授業の中では、これを実物投影機で映しながら、実際にその本の紹介もしました。
ブックトークをやるんでしたら、その本をしっかり読まなくてはいけませんね。
佐藤:当然そうなります。
競わせれば面白いんですよね。多少競い合いがあった方が、いいのかな?文章の表現がうまい子、絵がうまい子、それぞれあるでしょう。
佐藤:審査員は子供たちにやってもらっています。(笑)
学校図書館にはゲーム感覚を入れると面白いと思います。つまり自分の読書量というのを一年単位じゃなくて9年間で見て、賞というか、経験の証拠を与えるようなこと。ページ数にしてもいいと思います。9年間で何ページ数読んだか?のような。それがロールプレイゲームだと「経験値」。経験値があがると称号が上がっていく。図書マスターとか。要するに、称号がだんだん上がっていって、卒業するころに最高位を貰えるように努力するとか。
佐藤:たくさん本を読んでる子は文章を書く時にも活かされている気がします。ここで紹介しているポップを書いた生徒は、私たちが、理想とする「一年生でこのくらいの本を読んで欲しいな」というところよりさらに一つ上の段階に到達しているかと思います。
そういう子は、学校に置いてある本だと足りなくなって、図書館から本を取り寄せてあげないと満足しませんね。年間で100冊くらい読んでいるんでしょう。ところで参考にですが書店とかに行くとポップが置いてありますね。本を推薦するための小さいカードです。本の横に、ポップをつけて、販促のために本のそばに置いていますが、学校で行うと書いた人も学ぶし、友達に伝えると言う意味もあります。文章も推敲して書かないといけませんから。
鶴飼:今度は、「ポップを作ろう!」ということをやらせてみたいですね。
佐藤:本のソムリエになるということですね。最近ありますよね。
どうコメントを付けるかは文章の推敲能力です。長く書くのはあまり良くなくて、例えば何十字なら何十字の中で、どう表現するかというのが一番難しいようです。
佐藤:俳句作りも盛んによくやっています。日本語で書いて英訳して、絵がある。
それいいですね。ただ、川柳や俳句を書くんじゃなくて、何かと組み合わせると子供たちは面白がるし、見た人の印象も色々な方向から入ってくるから、効果があると思います。英語が入っているのが特徴ですね。色々な効果があると思います。
ところで、小学校で身に着いた読書の姿勢が中学校にも継続されるために学校現場でどんなことをやっていらっしゃるんでしょうか?
鶴飼:子供たちの読書に対する関心は、ずっと持っているものだと思うんです。低学年、中学年の時にはそれなりに時間を確保できるし、自分の読みたい時に読めるっていう時間もあるでしょう。ただ、小学校の高学年以上になるとスポーツ少年団、部活動、家庭学習がたくさん入ってくるので、なかなか時間的に厳しい。特に平日の読書にかける時間というのは激減していました。この小学校でもそうですし、中学校でもそうです。そこで、朝読書10分~15分という時間を確実に確保したり、子供たちの読みたい本(を揃えたりして)、読みたい意欲を維持持続させるような取り組みをやっていくというのが大事と思って取り組んできました。
図書館・学校紹介
取材後記
ここは多読している子供が多いですが、周りの環境が大きく影響していると思いました。中学生くらいになると、結局自分で読むしかないため環境の差が読書量に貢献していると考えられます。成長するに従って、読書により知識を得るということが、子どもたちの様々な課題解決に繋がっているという気がしました。
(山崎)