新潟県 新潟市立白根小学校

「調べ学習」は重点取組テーマ。学校図書館の年間活用計画を立て、教員と学校司書が協働で授業につなげる。

所在地:〒950-1217  新潟市南区白根1407
電話 :025-372-3145
設立 :明治6年 知新館として、西永寺に開校
E-mail: e605shiro-sho1@city-niigata.ed.jp
HP  :http://www.shirone-es.city-niigata.ed.jp/
児童数 475名 学級数 20学級 教職員数 37名
学校司書1名  (平成29年4月現在)
(白根小学校 提供)

取材日:2017年7月5日(木) 新潟市立中央図書館職員:青野さん(司書)が同行

教育目標

「ゆたかに かしこく たくましく」

○互いのよさを認め合い、自己決定できる子ども(こころプロジェクト)
○主体的に学習に取り組み、活用や表現を楽しむ子ども(まなびプロジェクト)
○からだづくりに関心をもち、健康的な生活習慣を目指す子ども(からだプロジェクト)

白根地区(南区)は「白根大凧合戦」で、その名が全国に知られている。

学校長インタビュー

対応いただいた
校長 須佐 一彦 様

学校の教育目標における図書館の位置づけ、活用についてお聞かせください。

【校 長】

学校で子どもたちが、さまざまな結びつきをもつ場が学校図書館です。教育目標では、「徳育」「知育」「体育」の順に記していますが、「徳育」が最も、読書と深い関わりがあると考えています。こころプロジェクト(徳育)では、高学年~低学年からなる”なかよし班”の混成チームを編成。高学年が自らの読書体験を生かして選書し、読み聞かせを行っています。なかよくなること、楽しむことを大切にしています。

縦割り班での読み聞かせ(白根小学校 提供)

まなびプロジェクトでは、調べ学習に取り組んでいます。学校司書が多読につながる図書を調査、教職員にもアプローチをして、その環境を整えてきました。本校では、一定の読書時間(図書館活用時間)を設けてありますが、調べ学習そのものを図書館で体験する時間とした取組を行っています。

今まで、3校に勤務してきましたが、どの学校も読書が盛んで、(子ども一人当たり)年間、150冊~200冊を数えるほどの読書量がありました。本校でも先生方に働き掛けて、図書館の活用を図ることが、学校長としての役割と考えています。

また、新潟市では「うちどく」(市立図書館の重点取組テーマ。学校と連携)にも取り組んでいます。白根地区では共働きの家庭も多く、地域にあった工夫を加えて推進し、親子で読書を楽しむことを啓発していきます。

地域連携では、夏休みに図書館を開放しています。子どもたちとその保護者の利用が中心なので、今後は地域に周知すること、図書を充実することが必要と思います。

市立図書館との連携について、どのような評価ですか。

【校 長】

白根図書館(学校図書館支援センター)から、定期的に職員が来校され、学校司書と意見交換をし、学校図書館の運用についての相談や助言を頂いています。

標準図書冊数は確保されていますが、「ものがたり」のジャンルを充実させたい。新着本は子どもたちには人気です。「資料もの」は鮮度が大切で、市立図書館の活用によって補い、限られた予算の有効活用につなげていきたいと思います。

ご協力ありがとうございました。


-以上-

図書館の特徴

ご説明いただいた
司書教諭)葭原 浄子 様(図書館主任)(右)
学校司書)羽賀 香奈子 様(左)

“調べ学習”として取り組む重点テーマ

新潟市では学校図書館活用推進校事業を展開。(この事業には、市内・小中学校が年30校程度、計画的に取組。5ヶ年計画で全校163校が一巡する。教育委員会・学校支援課が担当。学校毎に「全体計画」「活用計画」を事前作成し、年度末に「実践報告」を行っている。白根小学校は平成28年度の推進校で、その実践報告がされている。

参考

白根小学校28年度学校図書館活動実践報告

白根小学校の図書館は、「読書センター」として一定レベルにあり、「学習センター」としての”調べ学習”を活用の重点テーマとして取り組む。はじめに、羽賀先生は図書館の環境整備を手掛けた。本棚、掲示物、机、辞典などを調べ学習に沿った子どもの動線に配置換えした。国語や総合的な学習の時間を中心として、「図書館の活用能力を生かす。高める」ことを目的としていると葭原先生。総合的な学習の時間の具体的なテーマは、3年生が大豆・加工食品、4年生が凧、5年生が食と水俣病、6年生が”生き方に関わること”となっている。4年生の「凧」では、郷土資料を収集し、ものづくり(凧)の調べ学習に備えている。また、教員と司書の連携のため図書リクエストカードを作成し、調べ学習に用いる図書の情報を教員から聞き取り、資料を収集・提供したのち、学年毎、教科毎、月毎に分析し次年度に生かしている。

また、授業での実際の利用も反映した図書館活用計画表を作成。28年度の情報をもとに、29年度学校図書館年間活用計画表を作成し、授業に役立てている。授業支援に活用されるこの計画表は、図書館活用のめざすべき学校図書館の姿と言える。今後、この情報は蓄えられ、見直しで改善されていく。そして、広く新潟市全体で共有・活用されるとその効果は大であり、学力向上につながる優れた取組に発展する。(新潟県や全国での活用にもつながる。)

地域とのつながり

地域の図書館ボランティアは3つのグループが、学校をサポート。読み聞かせや本の修繕などで学校を支えている。新潟市の学校では、全域で地域教育コーディネーターがおり(地域の人たちから選任)、この学校では図書館ボランティアの呼びかけや橋渡し役として活躍されている。また、調べ学習に地域の人たちから関連する講話をしていただいたり、夏休みに学校図書館を地域にも開放したりしている。

市立図書館と連携、学校司書の配置

市立図書館(担当する学校図書館センターは市立白根図書館)との連携で、不足している図書や情報をサポートしている。「専任の学校司書は子どもたちや担任の先生方とのコミュニケーションなどにも優れ、市立図書館との連携にあたっている。ありがたい存在」と葭原先生。学校図書館支援センターに対する学校の評価は高い。

教職員の理解と図書館活用

児童一人あたり、コンスタントに年100冊以上の貸出冊数がある。(図書館基本情報参照)。このことについて、「教職員の図書館理解と活用」が大きいと葭原先生。学校では週1時間、「図書館の時間」があり、担任の先生から子どもたちへの働きかけができている。図書館からは定期的に「としょしつだより」が発行されているが、「教職員版」もあり、先生方への情報発信、情報共有が図られている。

図書基本情報

統計データ

⑦標準図書数:文部科学省の定めた学校図書館図書標準。10360+200×(学級数-18)
⑧充足率:学校図書館図書標準冊数(文科省)による白根小学校の蔵書数は10760冊で実際の蔵書数は11802冊で、充足率は達成している。また、専任の学校司書によって全国学校図書館協議会の「学校図書館図書廃棄規準」を参考に管理されている。
⑩読書量:全国学校図書館協議会の調べによると、多読月である5月を単月で調査。全国 平均11.2冊である。(雑誌やマンガも含む)。年間の読書量103冊は現在までに取材した小学校ではトップクラスである。

白根小学校からのおすすめ本

No 図書名 著作者 レコメンド 主な対象学年
1どうぶつのからだ 偕成社増井光子監修東京書籍「新しい国語」2下『ビーバーの大工事』などで活用。動物の特長をシリーズで紹介。目や耳など体の部分ごとにまとめられている1~2年生
212か月の絵図鑑 PHP長谷川康男監修12か月のえほんシリーズを1冊にまとめたもの。ルビつきの易しい紹介とイラストで日本の四季や文化、遊びなどが学べる。2~3年生
3光村の国語調べて・まとめて・コミュニケーション 光村教育図書中川一史監修2巻「疑問調べ大作戦」は疑問を何でどう調べるのか、資料の読み取り方、図書室の使い方なども載っていてオリエンテーションにもよい。3~4年生
4それ日本と逆!?文化のちがい習慣のちがい 学研須藤健一監修東京書籍「新しい国語」4下『くらしの中の和と洋』で活用。シリーズで、テーマごとに和と洋の文化の違いがイラストでわかりやすく紹介されている。4~5年生
5和食の教科書  文溪堂足立乙幸監修東京書籍「新しい国語」5『和の文化を受けつぐ』で活用。日本文化や和食の成り立ち、魅力などを紹介している1冊。巻末の資料も活用できる。5年生
6自由研究図鑑身近なふしぎを探検しよう 福音館書店有沢重雄 文「自由研究」の他にも「生活」や「料理」「園芸」などどれもおもしろい。調べてみたい、考えさせたい、身につけて欲しい生きる力の本。4~6年生

ふるさと教育などの資料

図書名 著作者 レコメンド
1白根の凧の全て 熱き戦い300年田村和雄地域の伝統文化「白根大凧合戦」の起源や激戦の様子、歴史がわかる一冊。総合学習(4年生)で活用している。
2新潟のむかし話1・2新潟県小学校図書館協議会新潟県各地のむかし話がたくさん載っている。おもしろい話や泣ける話など、項目分けされていて、方言で記されているので読み語りにもおもしろい。
3みらいずBOOKみらいずWORKS新潟で働く人を紹介する中高生向け冊子。いろんな職種が紹介され、中高生の日常なども載っているので6年生のキャリア教育に活用している。

図書館のご案内

入ってすぐのところに郷土資料を並べています。新潟市や南区が発行するパンフレットなどもあり、総合学習や社会科等いろいろな学年で地域資料が役立っています。
国語の教科書(東京書籍)で紹介されている本を学年ごとに集めた棚があります。学習の前後に本の場所を示し、子どもたちの読書を促す先生もいます。
図書室全体の本の並びが見渡せるような配置にしました。動線を意識して手前に参考図書・図鑑類を集めました。自由な曲線の机を目の前に置くことで、重い本でもすぐに用語が引けるので便利です。
調べ学習の流れを示した掲示が参考図書の棚近くにあります。テーマ設定や定義づけなど、図書室をスタート地点とした調べ学習が各教科・学習で定着してほしいと願っています。
学校のすぐ近くにある白根図書館から、司書が定期的に本を借りてきて置いています。料理・手芸などの実用書や子どもたちのリクエストに応えて選んでいます。購入の検討材料にもなり有効です。
先生方のリクエストをもとに、各学年の廊下に学習内容に応じた資料展示をしています。近くにあると、休み時間なども手にとって読む児童がいるようです。
休み時間は学年を問わずにぎわいます。本を読んだり司書に話をしにきたり…自由な雰囲気の中ですごしています。図書委員にカウンターを任せて、司書は子どもに寄り添って本選びを手伝っています。
普段の休み時間の様子です。本を介して友だちと会話を楽しんだり、短い時間でも集中して読書をしたりする姿も見られます。

取材後記

文部科学省のホームページによると、司書教諭は「教諭として採用された者が、学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導、さらには、学校図書館の利用指導計画を立案し、実施の中心となるなど、学校図書館の運営・活用について中心的な役割を担う。」とされている。後日、取材した市立松浜中学校、市立東特別支援学校でも言えるのだが、どの学校でも司書教諭が積極的に取材に応え、考え方や活動を紹介してくれた。取材で訪れた他自治体の学校の中には、「学校司書さんにはよくやってもらっています。学校図書館は学校司書さんにお任せしています。」などの場面に出会うこともある。教員の多忙感が高いことが一因としてあるのだと思う。が、しかし新潟市では、司書教諭の方々が、図書館を活用した授業の有り様、授業の仕方、成果と課題、改善などに取り組み、先生方や学校司書と協働で図書館の活用を図っている。この中で学校司書の専門性が役立ち、スキルが高められて教育に生かされる。

(菅原)

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