山形県 上山市立図書館 ―学校支援―
健やか交流都市 かみのやま
(2017年3月10日 取材)
所在地 〒999-3143 山形県上山市二日町10-25 カミン5階
TEL:023-677-0850
FAX:023-677-0826
E-mail:mailbox@kaminoyama-lib.jp
HP: http://www.kaminoyama-lib.jp/
上山市と上山市立図書館
上山市は山形県南東部に位置し、隣接する山形市等とともに村山地域にある人口3.2万人、面積241㎢の市である。「お城と温泉」の町として知られており、歌人・斎藤茂吉生誕の地でもある。市内には小学校が5校、中学校3校、高等学校1校、計9校がある。市では平成25年1月に「上山市子ども読書活動推進計画」を策定(学校教育課担当)。
小・中学校での具体的な取組や学校図書館の整備が進められてきた。
市では平成28年3月に「上山市第7次振興計画」を策定し、公開している。この中で、生涯学習部門に属する市立図書館の具体的な方向性が示されている。
図書館は中心市街地の商業ビル5Fにある1館があり、市の直営で運営されている。従来から子どもの読書活動に熱心な図書館であり、文部科学省が行っている「子ども読書活動優秀実践図書館(平成27年度)」を受賞している。また、絵本や児童書が充実しており、子どもたちに配慮したスペースが多く割かれている。
図書館は教育委員会の生涯学習課に所属。体制は次の通りである。
上山市立図書館の基礎データ
学校支援、これまでの歩み
(上山小学校、南小学校、北中学校、南中学校には学校司書を配置済み。)
平成25年3月~
・市内小・中学校文集の収集・登録及び展示を開始。
・「上山市子ども読書活動推進計画」を策定。
・2分の1成人式(小学4年生)記念で市立図書館利用カードを作成・贈呈。
平成26年~
・市内各地区での「出前図書館」を開始。
・図書館主催で学校及び市立図書館職員合同の「読書活動指導者合同研修会」を開催。
以降、継続して開催。
・図書館協議会委員と共に、学校図書館巡回訪問を実施。以降、継続して実施。
平成27年4月
・文部科学省が行っている「子ども読書活動優秀実践図書館」を受賞。
平成28年3月
・「上山市第7次振興計画」を策定。市立図書館の具体的な方向性や事業について広報。
図書館の運営方針について
図書館の運営方針について、館長の斎藤氏と、副主幹の山口氏にお話しを伺った。
図書館は「市の文化拠点」であり、市民の知的ニーズにしっかり対応していくことが大切です。
具体的には、次の5点を大切にしています。
1.常に質の高いサービスを市民に提供する。
例示として快適な図書館の環境整備を進めてきている。館内温度の柔軟な設定、明るいLED照明への切り替え、トイレの改修、ブラインドやロッカーの取替えなどを行って、快適な図書館に改善してきた。
2.人や文化・伝統を創り出す。
特に「レファレンスサービス」の強化を進める。資料を中心としたレファレンスサービスに留まることなく、さまざまな文化人、専門家との人的なネットワークを築いて、「人」をつなげていくサービスにしたい。
3.「出かける図書館」でありたい。
待っている時代ではない。あざみ学童クラブ(学童保育)への出前図書館、学校図書館巡回等を行っており、子どもたちや市民との「つながりの場」を設けて、積極的に外に出ている。
4.「知識・知恵」を生かす展示を行う。
上山市にゆかりのある著者、偉人、文化などに関わるテーマ展示、企画展示で、さまざまな知識・知恵を結集して進めていく。
5.学校と連携を図り、探究的学習の支援を行う。
市では「子ども読書活動推進計画」を策定しているが、実践的な活動を行うことが大切である。今、学校では「探究的学習」に取り組んでいるが、市立図書館の活用が効果的であり、教育委員会の学校教育課と共に、具体策をフォローしていく。
子供たち・学校を応援する図書館
市立図書館は中心市街地の商業ビル、5F(1フロアー全て)にある。広さはおおよそ2500平方メートル。極めて、広くゆったりした明るいつくり。窓越しには上山城、遠方には蔵王のスキー場や山並みが見えるすばらしい環境にある。また、斎藤茂吉の作品集をはじめ、多くの全集や文庫を所蔵、配架してある。また、隣接する山形市などと共に村山地域(広域行政圏)における図書館の相互利用も行っている。
図書館の展示で際立っている「市立南小学校38年の歩み」企画展。入口の最も大切な場所に学校新聞や沿革資料、年表などを学校から借用し、公開・展示している。子どもたちや学校を支援する「学校連携活動」として取組む企画である。南小学校にゆかりのある市民にとっても、子どもの時代を懐かしみながら、学校のすばらしさ、誇らしさを思い起こす、市民目線の企画でもある。なお、この他に、平成28年度は「西郷第一小学校142年の歩み」「中川小学校124年の歩み」の企画展も行っている。
あざみ学童クラブは放課後、子どもたちが集まる学童保育施設であり、中心市街地からはやや遠方にある宮川小学区に位置している。学童保育は福祉部門の所管ではあるが、市立図書館は「出前図書館」をきっかけに、月50冊ほどを選書し、貸出している。移動図書館や図書館専用車がなく、また遠方の小規模校では学校司書がいない中で市のマイクロバスを使用するなどして、子どもたちへ「よりよい本との出会い」の機会を作っている。子育て支援を具体的にすすめる、市民ニーズに沿った活動である。
また、新町親老会(老人クラブ)や市の地区公民館(周辺の7地区)にも「出前図書館」を行って市民サービスの向上を図っている。
上山市内の小学校では小学4年生(10歳)を対象に、2分の1成人式を行っている。校長会の発案により、2分の1成人式記念の図書館利用カードを作成し、読書活動の推進を働き掛けている。 また、小学校の授業の一環としての「市立図書館訪問」を受入。中学校ではキャリア教育としての「図書館職場体験」も受け入れて実施している。さらに、読書活動指導者合同研修会を開催して、関係者の情報共有やスキルアップを図っている。
学校への支援状況は次の通りである。(年度当たりの実施回数)
図書館では読書感想文等、読書感想画のコンクールを行っている。読書感想文等は1.小・中学校の部、2.高校の部、3.一般の部に分かれており、一般の部は「詩」や「手紙」など形式は問わない。読書感想画(小・中学校の部のみ)では画材の指定がなく、市民が自由に参加できるイベントとして開催されている。
参考
※コンクール募集要項が掲載されています
取材後記
上山市立図書館はさまざまな形で「学校図書館連携」を行っている。個別に開催する学校の企画展などに見られるように「学校とのつながり」に知恵と工夫で臨んでいる。今後、一層、学校関係者の皆さんが市立図書館とのつながりを強くして、学校図書館・市立図書館の活用を盛り上げてほしい。
(菅原)