岐阜市立中央図書館 -みんなの森 ぎふメディアコスモス-

2022年度にLibrary of the Year大賞を見事受賞した「みんなの森 ぎふメディアコスモス」。“図書館と市民活動を軸に地域の可能性を追求する”という点が高く評価され、今回の受賞となりました。あらゆる世代の市民との交流や居場所が作り上げられているメディアコスモスの、継続して新たな取り組みを模索し続けるその姿を取材してきました。

(取材日:2023年4月27日(木))

ぎふメディアコスモスの魅力

今回のインタビューイー

今回取材させていただいた、(左から)
図書館 事業係:松野 良紀 氏/総合プロデューサー:吉成 信夫 氏

市民同士の交流を活発に

(敬称略)

 松野:この建物全体をメディアコスモスと呼んでいます。ここの1階は市民のみなさんが借りられる貸館になっていて、テラスでは展示・講演会ができるようになっています。市役所とみんなの森 ぎふメディアコスモスの間の広場にはキッチンカーなどもあり、市民の方々は多岐に渡ってこの施設を利用しています。

みんなの森 ぎふメディアコスモス外観
1階の図面

こちらの特徴的な展示は何でしょうか?

松野:「まちライブラリー@メディコス」という、交流型の本棚です。コロナ禍でも何かできることはないかと、「ぎふライブラリークラブ」という市民グループのみなさんと一緒に始めました。市民の人たちが持ち寄った本をここで貸出できるようにしています。図書館の蔵書ではないので、貸出記録ノートに記入することで誰でも気軽に借りることができます。本を置く方は読む方に向けてメッセージを書き、読んだ方がメッセージを記入することができ、市民同士の交流が図れるようになっています。

まちライブラリー@メディコス
メッセージ
メッセージや感想のやり取り
市民活動交流センター看板

「市民活動交流センター」は図書館の職員の方が運営されているのでしょうか?

松野:ここは市役所の図書館以外の部署が担当しています。市民団体の支援などが行われていて、登録した団体が使える作業室などもあります。
それ以外にもメディアコスモス内には登録なしでも使える大小さまざまなスタジオがあって、ダンス教室やヨガ教室などで利用される団体も多くあります。今日もヨガ教室で利用していますね。

登録団体が使える作業室(つくるスタジオ)
貸室で行われているヨガ教室(つながるスタジオ)

シビックプライドプレイス -ぎふ古今-

松野:メディアコスモスを中心とした岐阜市のスポットをこちらで紹介しています。
現在のスポットを紹介する「まち歩きステーション」では、行きたい場所を選択すると地図が出来上がり、スマートフォンでダウンロードして、まち歩きができるようになっています。また、「ぎふ歴史ギャラリー」では古い貴重な写真から、岐阜の歴史を重層的に見ることができます。

まち歩きマップ作成の様子

「ぎふ歴史ギャラリー」の写真は市民が登録しているのですか?

松野:市役所の公的な写真だけではなく、市民の皆さんからも写真を募集して追加しています。
行政資料に市民提供の写真を組み合わせることで、より日常生活に近い地域の歴史や風景の懐かしさを感じとっていただけます。

松野:こちらは、岐阜にゆかりのある歴史上の偉人や現在、伝統工芸などの分野で活躍している岐阜の人の紹介カード(しおり)です。自由に持って帰れるのでよかったらどうぞ!
また、このドーム状の空間を「コクーン(英語で繭(まゆ)の意味)」と呼んでおり、よく見てみると金華山のシルエットが描かれているので、こういったデザインもお楽しみください。
これらを通じて地域を知り、より盛り上げる活動につながっていると私は感じています。

岐阜な人カード
金華山のシルエットが描かれている

子どもの声は未来の声

館内に入り目の前のエスカレータを上ると、大小様々なグローブが印象的で壁がなく開放感のある図書館が広がっています。東濃ひのきの香りに包まれ、天井からは日の光が注ぐ温かい雰囲気の館内が演出されていました。「子どもの声は未来の声」の理念通り、子供たちが少し騒いでいてもみんなで見守るよというような安心感がありました。

このグローブはどんな特徴があるのですか?

松野:大きさが4種類あり、この図書館内に11か所のグローブが存在しています。
グローブには、「展示のグローブ」、「文学のグローブ」、「レファレンスグローブ」、「郷土のグローブ」など11か所毎にそれぞれの名前があり、一つ一つデザインが異なります。
グローブに対して、放射線状に本棚が配置されており、壁がなく開放的な図書館を緩やかに仕切る役割にもなっています。 グローブの下が閲覧席になっている場所もあるので、毎日、来館者の皆さんがそれぞれの場所でくつろぎながら本を読んでいますよ。

開放的な空間が広がる館内
グローブの下はくつろげる閲覧席

児童コーナーも広くて充実していますね。ところで、これは..何でしょう?

にゃんこカート「にゃん吉」

松野:これはにゃんこカートの「にゃん吉」です。おはなし会などで使用しています。わんこカートの「きらら」が初代でおりまして、「にゃん吉」は2代目です。動かすことができて、お尻のあたりに本が収納できるスペースがあるんです。

可愛いですね。子供の目線で仕掛けが作られているのは良いですね。

市民と図書館のコミュニケーション

松野:こちらもご覧ください。本来ここは閲覧席になっていたのですが、席をなくして商店街に見立てた展示になっています。
ケーキ屋さんにお寿司屋さん、時期で少しずつ変わるようにしています。
実は、この郵便屋さんのポストにお手紙を入れることができて、ここにお手紙を入れると司書や館長がお返事をしてくれるようになっているんです。

下のポストにお手紙を入れられる
お返事用の掲示板

すごいですね!!こういったところでも市民の方々とのコミュニケーションを図っているんですね。

松野:はい。たくさんのお手紙が届いて返事を書くのにも苦労した時期もありました。
ですが、こうやってコミュニケーションをとることでまた来たいと思ってもらえるよう工夫をしています。また、YA(ヤングアダルト)エリアにも「心の叫びを聞け! YA交流掲示板」という掲示板があるんです。司書が匿名でお悩みに回答したり、本を提案したりする仕組みになっていて、ここでもコミュニケーションが取れるようにしています。これまでに2,000件を超える投稿が寄せられており、図書館の人気スポットになっています。

素敵な取り組みですね。こんなに広々とYAエリアを確保しているのも珍しいですね。

松野:こちらは、YA専用席になります。利用者が自分で旗を立てて席取りができるような仕組みになっています。テスト週間などになると満席近くになり、ここでみなさんがよく勉強しています。

こうやって席が沢山あると来たくなりますよね。

YA専用席
旗を立てて席取り

こちらの展示コーナーは市民と共同で作られているのですか?

松野:ここは、市民のおすすめ本を展示しているコーナーになります。おすすめだと思う点を記載してもらい、それと一緒に展示しています。ここで展示するとすぐに借りられますね(笑)

みんなのlibrary
紹介者のおすすめポイントが掲載されている

おすすめされていると読みたくなっちゃいますよね。

松野:この「レファレンスカウンター」では、起業や商品開発、小規模事業者の売上拡大、経営改善など経営上のお悩み相談窓口として「ビジネスチャレンジ支援相談窓口」を定期的に開設しており、色々な方のご相談に司書とコーディネーターが対応しています。

こうやって、色んな相談に乗ってくださる場があるのは、安心ができますよね。

松野:また他にも、”岐阜にいながら知らなかった岐阜を知る”をコンセプトにした「みんなの図書館 おとなの夜学」という講座をNPO法人との協働事業として開催しています。扱うテーマは幅広く、今では人気企画になっています。講座の内容をまとめたブックレットもこちらで販売しています。

ここで販売もしているんですね。後でじっくり見させてください。

レファレンスカウンター

「屋根のついた公園」

図書館を囲うようにあるテラス席で市を眺望でき(天気が良ければ岐阜城も見える!)、並木通りの青々と茂った木の下で、市民が楽しそうに各々の時間を過ごしているのが印象的でまさしく”屋根のついた公園”だと感じました。

せせらぎの並木テニテオ