沖縄県立図書館

沖縄県立図書館様を訪問しました

2024年8月23日に、図書館サービス向上委員会の山崎博樹委員長と沖縄県立図書館を見学させていただきました。館内の紹介や、広域サービス室で取り組んでいる「空とぶ図書館」についてお話を伺うことができました。ご対応くださった皆様、ありがとうございました。

沖縄県立図書館 左から:大宜見 勝美館長、宮野 賢行副参事
沖縄県立図書館 左から:大宜見 勝美館長、宮野 賢行副参事
広域サービス室 左から:仲尾 涼子様、呉屋 貴司様

賑わいを創造して

沖縄県立図書館は、那覇市内の中心地に位置しており、沖縄都市モノレール(ゆいレール)「旭橋駅」直結の建物の3階から6階が、図書館施設となっています。入口のある3階は子どもの読書活動推進エリアとして子育て支援からティーンズコーナーが揃っています。エントランスホールを通った先に子どもの本を置くことで、賑わいが見え、静かな図書館というイメージとは異なる雰囲気がある図書館でした。

仲尾:カウンターへ申し出なくても、予約した本は予約本受取コーナーでセルフで受け取ることができます。利用者カードをかざすと案内レシートが印刷されるので、内容を確認して棚から予約本を受け取ることができます。

予約本受け取りコーナー

仲尾:子ども読書活動推進エリアの奥には、おはなしの森コーナーがあり、靴を脱いで利用できます。壁には沖縄に伝わる精霊キジムナーがこっそりと描かれています。

おはなしの森コーナーの精霊キジムナー

仲尾:閲覧席の照明には、沖縄の織物をイメージしたランプシェードを使用しています。

温かみがあって、良い閲覧席ですね。

ランプシェードを使用した閲覧席

仲尾:他にも、子ども読書活動推進エリアには学校図書館支援コーナーや、展示会用の教科書をいただいて学校の教科書を置いているコーナーもあります。

学校図書館支援コーナー
学校の教科書を置いているコーナー

海のような場所を

仲尾:4階は一般閲覧室になっています。図書館と同じ建物内にハローワークがあるので、ビジネス書を多く取り揃えています。レファレンス・サービスを紹介する展示も常設しています。魔女の研究室をイメージし、書架をシックな色に装飾して、レファレンスの事例パネルと資料を展示しています。こちらの本は、実際に貸出や予約もできます。

レファレンス展示
レファレンスの申し込み方法のパネル

仲尾:仕事用にビジネスルームも用意しています。座席は予約制です。貸し切りもできるので、週末はビジネス関連の講演などにも使用されています。

ビジネスルーム

仲尾:4階には、多文化エリアとして、「アメリカ情報コーナー」や「上海ウィンドウ」「韓国コーナー」「台湾コーナー」「JICAコーナー」などがあります。洋書や多読の本、各国の言語に翻訳された小説や漫画もあり、充実しています。外国語の映画上映会もしております。職場体験で中国出身の中学生が来られた際に描いてもらったPOPでおすすめの本も紹介しています。

アメリカ情報コーナー
中国出身の中学生が来られた際に描いてもらったPOP

森の中で静かに

仲尾:5階は郷土資料のコーナーになります。郷土資料は貸出用、閲覧用、保存用で3部購入しています。

郷土資料コーナー

仲尾:戦争で焼けてしまって資料が無くなってしまいましたが、歴史を繋いでいくために、市町村や字ごとに作成された市町村史と字史を収集し、配架しています。沖縄県では、移民一世として海外へ渡った方が世界各地にたくさんいます。「世界のウチナーンチュ大会」で、自分のルーツを調べたいという方に向けたルーツ調査レファレンス・サービスを出展したことをきっかけに、沖縄県立図書館にある字史や渡航記録などから一世の方の出身地などを調査する事業をしています。

地域史コーナー
移民資料コーナー

仲尾:郷土資料のコーナーではフリーペーパーも積極的に集めています。るるぶなどの旅行ガイドブック情報誌も充実しています。この旅行記の棚に、ペリー艦隊日本遠征記も配架されているのが私は好きなんです。

郷土資料コーナー

仲尾:この郷土資料コーナーは、沖縄県の歴史がより詳しく調べられるところなので、ぜひ皆様にも来てもらいたいと思っています。

広域サービス 空とぶ図書館

空飛ぶ図書館
広域サービス室

仲尾:広域サービス室では、「空とぶ図書館」という事業を行っています。沖縄県は離島が多く、図書館が無い島も多く存在します。沖縄県立図書館の初代館長伊波普猷氏が掲げた、“県民の知と心の拠り所となる開かれた場所であること”を方針として、離島にも本を届けに行くサービスが、空とぶ図書館です。

たった2日間で、100人以上の方集まり、1000冊もの本が借りられていて、大きな反響があると感じました。離島ならではのニーズはありますか?

仲尾:離島には高校が無いので、中学校卒業後は親元を離れて宮古島か石垣島か本土の高校に行く子どもたちが多いです。島を離れる前にある程度、家事や金銭感覚を身に付けさせたいという保護者の方の思いをテーマに取り入れたりすることもあります。

会場設営はどのようにされているんですか?

呉屋:会場となる公民館にあるテーブルや、貸出用に持っていく本の段ボールなどを使って即席で書架を作ります。子供が手に取りやすいように低めに作っています。

想定していたことと実際は違った、ギャップを感じたことなどはありませんか?

呉屋:空とぶ図書館の役割としては、「本との出会い」をコンセプトにしています。こちらから特集で持っていくもの、借りられないかもしれないけど持っていった方が良い本や、一般的に人気がある本や新着本などを中心に持っていきます。事前にアンケートを取ってそれに沿って特集を決めたりすることもあります。例えば、冬場の島は観光のオフシーズンになり、そこで家の修理をする方が増えるので、DIYの本を持っていきます。また、床屋がない島もあるので、ヘアカット方法の本などを持っていくこともあります。他にも図書館を設営する際に、政治経済や戦争平和など、新聞の見出しのように本を並べて、本を借りなくても時事ネタが分かるように工夫をしています。やはり人気があるのは新着本で、2、3年以内に購入した本をメインに持っていくようにしています。

苦労した点や印象的な出来事はありますか?

仲尾:開催の調整が難しく、訪問する職員の宿が確保出来ていなかったり、フェリーが出なかったりとトラブルも多くありましたね…。

呉屋:自然豊かな環境なので、窓から鹿が覗いていたことがあります。苦労した点としては、目標をどう設定すべきか迷うことです。貸出冊数を目標にすると島のイベント等の外的要因によって冊数が上下するので、そういった点をどう考えるのかが難しいなと思います。ただ、書店も無く本との出会いも少ない島の方にとっては貴重な機会だと思うので、大切なサービスだと考えています。

空とぶ図書館の他に、協力貸出と一括貸出が存在します。協力貸出は、図書館の代わりになる窓口を各自治体の教育委員会や学校・公民館などの施設につくってもらって借りたい本を郵送で送ります。送料は無料です。一括貸出は、個人ではなく、学校や公民館、地域文庫などの団体に500冊まで本を貸出しています。借りたい本を借りられるのが協力貸出、団体向けに長期間貸出するのが一括貸出、本と出会うのが空とぶ図書館となります。空とぶ図書館は、各島に年に一回しか訪問できませんが、協力貸出と一括貸出と合わせて3本柱で行っています。

仲尾:大きなキャリーケースを持って空とぶ図書館の会場に来てくださるご家族もいます。他にも、1日目に絵本などをたくさん借りて、次の日には返却してまた新しい本を借りに来る子どもたちもいるので、嬉しく思っています。

本との出会いは人生を豊かにしますよね。今日はありがとうございました。