秋田県・東成瀬村教育委員会 ―なるせ児童館―
学力トップクラスを支える東成瀬村の仕組み(2)

所在地:〒019-0801 秋田県雄勝郡東成瀬村田子内字上野8番地
電話 :0182-38-8711
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なるせ児童館の施設案内は以下からご覧いただけます。
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なるせ児童館の平成28年度事業計画は以下からご覧いただけます。
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なるせ児童館の平成27年度利用状況と活動報告は以下からご覧いただけます。
館長・司書インタビュー

ここの図書館と学校の連携とのつながりの部分をお話していただければと思います。
館長:児童館の中に、このような形で図書館があるのは秋田県でも、全国的にも珍しいのではないかと思います。児童健全育成ということで、村の子どもたちの健全育成を図る事業として子育て支援では子育て広場の実施と、放課後子どもプランということで学童クラブと子ども教室を2ヶ所で行っています。図書活動では児童館の中で読書推進活動をしよう、させたいという目的から、様々な事業を年間を通じて児童館の中で実施しています。放課後子どもプランでは年間このように、子育て支援ではこのように、図書館もこのように、年間計画が立てられているので4つの事業を共催しています。映画会や工作活動などをすることにより、図書館と児童館の事業が内容豊富になりとても良いことだと感じております。特色のある児童館であり図書館であるということで、この館内の中での共催、下の保育園との連携、それから、小学校が渡り廊下でつながっているということで、連携が容易にできるという環境で、私たち職員も子どもたちも住民も、スムーズに活動できているように思います。設立6年目に入ったので、現在行っている事業を見直し、目だまとなるものを考えなければならない時期にあると思います。
菊地:私は図書館司書として教育委員会から派遣されていて、村の公民館図書室の機能を持った児童館の図書室を担当しています。ここを拠点に下の保育園ですとか隣の小学校・中学校、さらに地域の方の読書環境作りを担当しております。図書室の蔵書冊数は、11566冊になりました。利用状況ですが、平成23年度より移設開館しまして5年目になり、入館者総数は4951人に達しまた。貸出冊数宇は2302冊、AVの貸出数は375件となり、過去最高の数字になることができました。村民が2600人程度ですので、貸出冊数が一人あたり1冊に達したことになりました。
毎月のテーマを決めて実施していますが、平成27年度は、6月にここの開館五周年を記念しまして音楽コンサートが開催されたことが挙げられます。また毎月1回のここの定例お話し会に始まりまして、7か月検診におけるブックスタート事業、未就園児さん、今日もいらっしゃっていましたが、広場、保育園、小学校、中学校、児童館、図書館におきまして赤ちゃんから中学生までの子供読書環境作りをここの子育て支援チーム「読み語りグループつくしんぼ」という村のボランティアグループの方々と協力をしながら活動を行っています。こちらは(別紙)図書室を拠点にこのような動きをしているというイメージ図になります。東成瀬小学校には、わたくしは週に2回訪問しまして、委員会活動の子供たちと一緒に活動をしております。中学校の方には週1回訪問しております。そして、次の資料になりますが、去年8月から東成瀬図書館だよりというものを配布しまして、村民に情報提供ということで村民に回覧を始めました。そうしましたところ、すぐに電話がかかってきたり、本を借りに来てくれる方が増えまして、関心を寄せていただいています。
ありがとうございました。学校訪問について、具体的に何をやられているのでしょうか?
菊地:図書委員会の子供たちと一緒に活動していることが多いんですが、毎月の行事や季節に合わせたテーマ展示ですとか、新しい本の紹介とかおすすめの本の紹介ですとか、図書集会などもやっていますので、その時の指導とかアドバイスとかをやっております。
小学校と中学校で何か違うことはあるんでしょうか?
菊地:小学校では、本の貸出とか返却は、児童個人でやっております。中学校は、図書館システムを使いまして貸出し・返却を生徒が中心にやっております。
図書委員がやっているのでしょうか?
菊地:中学校は、図書委員というのがなくて中央委員会という委員会がありまして、その生徒が図書当番を決めて行っています。
定期的な管理と展示等をされているんですね。
菊地:すぐ近くですので。行こうと思えばいけますから。小学校は週2回となっていますが、毎日のように顔を出しています。本を戻したりも子供たちがやっています。
学校には司書教諭の先生はいらっしゃるんでしょうか?
鶴飼:図書担当の教諭がいます。司書の資格がある方はいません。司書教諭も置いていないです。
菊地:小学校でご覧になってもらうと分かりますが、学級文庫をおいているのでそこの管理ですとか学習資料として理科とか国語科、生活科で必要な資料を取り寄せるなどもしています。
近いから技術的なアドバイスはこちらでできる。司書がいないと管理できないからといって鍵をかけて、図書室閉めているという学校を聞いたことがあり、お昼と放課後開ける図書室も多いですね。
鶴飼:以前はわれわれもそうでした。
ここは、そういう考え方を取っていない。割と自由に使わせてもらっている。そもそも狭いエリアだからですね。
谷藤:読んだものはきれいに戻されています。ここでも児童館なので、子供たちの本の扱いはどうなんだろう?と最初は非常に心配だったんですが、問題ないんですよ。
菊地:小学校も中学校も新学期、オリエンテーションをやりまして、公共の図書館、学校図書館の利用の仕方を勉強してもらっています。
この児童館図書室も小学校も中学校も含めて、そういう活動計画っていうのはこちらでまとめて計画されるんですか?
菊地:学校は学校であるし、ここはここであります。連携しながらやっています。
ちゃんと連携しているのが素晴らしい。各先生方の読書にかかわる相談は、日常の自由なやり取りの中で行われているんですね。
鶴飼:考えようによっては小中合わせて先生方30名がいますが、その先生方全てが司書だと思った方がいいと思います。
今までの行政の枠組みですと、福祉、教育委員会、学校の部分で行われることを全部を分類し直し、一つの教育委員会の中でこういった枠組みを作られたのは、いつからなのでしょうか?
谷藤:10年前くらいかもしれない。保育園の仕事が教育委員会に移ったのは、10年前くらいだと思います。児童館も含めて教育委員会に移ったのは。
鶴飼:村長の考えでした。やってみたらこの方がいい。枠は取っ払った方が、財政面でもすべていい。いろいろと迷惑かけてるかもしれないけど(笑)
谷藤:視察にこられた方も、「こういったことができるのか?」って驚かれます。
鶴飼:とかく法律だとか、役割が先に立つから、行政の枠内で、そういううまいつながりができるような行政運営がどうやったんだろうと疑問に思われるようですね。ハード面ができたのは、ソフトな中身を整えて、「よういドン」で始めたといったほうがいいかもしれません。そうでないと、こういうところは立ち行かなくなります。一体的にやる方がいいという村長の考えもありました。
考え方がハードに繋がったんですね。複合施設は、大体子育て支援機能が入っていますが、結構バラバラの運営が多いようです。
鶴飼:これはやっぱり、「人を育てる」というコンセプトが底辺にあるからでしょう。そうなれば形なんてどうでもいい。ですから、それを先に考えれば、住民もここに集まってくれれば色々な経験ができるといった発想です。
子供にとって組織は関係ないですしね。誰を中心に考えるかが行政の役割でしょう。こういった活動や村長さんのリーダーシップを始め、こういった施策に表れて、それが子供たちの成長にプラスの影響を与えているのではないかと話を聞いていて思いました。さらにそれをずっと通していらっしゃるのが素晴らしい。もう上の人が変わったとしても、こういうことが住民や子供たちに根付けば、そう簡単に消えてはいかないでしょう。これが一つの理想の姿ではないでしょうか?これが学校だけにいれば、菊地さんもちょっと仕事として足りない。ここと一体的にやっているから活躍できていらっしゃるんでしょうね。
鶴飼:ゼロからかかわってくださっているので、それが、中学3年生までいくのでこれはすごい財産。つまり繋がっていることが財産なのです。
菊地:高校生もきますから。
児童という名前以上ですね。保育から含めて全部。これも特徴ですね。
鶴飼:人間にとってプレッシャーは「人」。それは今度、学校段階が変わったことによって変わるとのは子供には関係ない話。子供の成長は連続性だから。そこのところで我々は、子供たちに無駄なプレッシャーを与えたくない。私は中学校教員が長いんですが、小から中に来るときに「中学校の姉ちゃん、兄ちゃん、先生が怖い」というのが小学校6年生の感想。だから、中一ギャップがある。そこで私たちの根底にあるのは「枠を外す」ということで自由な発想ができるといいと思っています。
小さいころから幼稚園のころから高校生のお兄ちゃんといつもやっているんだから、ここは自然ですね。作ったものというより、ハードもそうですが、一体となっているので自然に子供たちが年代関係なく交流できていて違和感がない。
鶴飼:一体的なところのいいところ、教育の面でいいのは、高校生がここにきて勉強するというのがいい。それを小さいときから見ている。暗黙の指導になっています。
本来公立図書館もそういう役目があると思います。色々な年代の人、小さな子どもたちが本を読みに来て、中高校生たちが勉強しに来て、大人と一緒の場所で活動するといった貴重な空間であるからです。そう考えると鶴飼教育長さんが言われた「異質なもののふれあい」あれはどきっとした言葉でした。そういうような子供たちの年代を超えたふれあいの場は、最大の勉強の場だと思います。
鶴飼:今、そういった場を、意図的に作らないとなくなっている。仕組みを作らないと触れ合えない。皆それぞれ忙しすぎますから。
菊地:保育園からも子供たちがここに来ます。保育参観で親子さんでここで本を読まれることがあります。
なるせ児童館図書室 紹介








まとめ
学校図書館では、一般的に貸出数は多くないところも多いようですが、この貸出実績の実際の効果が必ずしもわかりにくい。しかし図書館や学校図書館で本を読む、そこで過ごすと言う意味はあることです。確かに沢山本を買ってたくさん置けば、貸し出しは増えるし、柔らかい本を沢山置けば貸出冊数は増えますが、鶴飼教育長さんのお話しを聞き、教育効果はどうあるべきかを考える必要があると考えさせられました。今は数的な実績が問われので貸出サービスの強化はもちろん必要ですが、必ずしも子供たちは本を借りなくてもいい、本と触れる環境が東成瀬村にはあります。むしろ家に帰ったら家族としゃべった方がいいかもしれない。これは貸し出しの実績には反映されないことですね。ここでは学校と図書館の一体での読書環境になっている。自宅に帰る前にここにくるので、すでにここは家庭の一部になっています。東成瀬村で考えているのは「年代を超えたふれあい」で、その手段として読書という環境があるということではないかと感じました。