由利本荘市中央図書館(秋田県)―学校連携―

「NO」といわない公立図書館

所在地:〒015-0076 秋田県由利本荘市東町15 カダーレ内
電話 :0184-22-4900
E-mail:hon-tosyo@city.yurihonjo.akita.jp
HP :http://www.city.yurihonjo.akita.jp/honjo/tosyo/

事業計画

 学校連携分野 -由利本荘市中央図書館・提供資料より抜粋-

  • 学校図書館との連携・支援…中央図書館担当職員による市内小中学校図書館巡回支援
  • 「ライブラリー+1」研修…秋田県立図書館による図書館・公民館図書室・学校図書館支援研修

(本市は学校図書館支援研修を毎年実施)

取材に対応いただいた畠山館長、学校担当司書・志村さん
古川館長補佐(右から)

図書基本情報

平成27年度の学校への貸出冊数4300冊余りは、財政的効果として780万円に相当する。
(全国学校図書館協会調べ 平成27年度平均購入図書単価 小中学校1800円/冊)

由利本荘市と中央図書館

由利本荘市は2007年3月22日、 本荘市と由利郡矢島町・岩城町・由利町・西目町・鳥海町・東由利町・大内町の1市7町が合併し、「由利本荘市」として発足。面積は約1,210 平方キロメートルで神奈川県の半分程度と広く、また人口は約 8万人である。合併時は小中学校数が32校であったが、平成28年4月現在、小学校14校、中学校10校の24校となっており、学校の統合がすすんでいる。

中央図書館は平成23年に新設された、複合施設「文化交流館カダーレ」内にある。斬新なデザインの建物で、レストランや産直も併設され、多くの市民に利用されている。市には公立図書館が他に2館、公民館図書室が5室あり、いずれも合併前の町施設を継承している。中央図書館には、学校担当の専任司書職員がおり、各校の司書教諭や学校司書との良好な関係を維持、継承しながら学校図書館を支えてきた。また図書館は新たなサービスとして「医療機関連携」を開始。挑戦的なサービスで「市民生活をささえる図書館」として日々、活動している。

学校連携、これまでの歩み

平成21年度~平成23年度

 由利本荘市では、平成21年度から3ヶ年にわたって、秋田県が行う「ふるさと雇用再生臨時対策基金事業」を活用して「図書支援員(学校司書)」を26名雇用し、すでに配置済みであった6校と合わせて、全校に配置した。また、同時に秋田県教育委員会では「子ども読書夢プラン事業」として、司書有資格者を新規採用し、由利本荘市に派遣。図書館運用のノウハウと人材の育成を行った。これら二つの事業によって、学校図書館の環境整備が一気にすすみ、読書教育の向上が図られた。このことが学校での評価をたかめた。

平成24年度~現在

 市の単独事業として事業を継続。市職員として図書支援員(学校司書)を16名採用し(小規模校は複数校兼任)、全校への職員配置を継続した。また、学校と連携を図るハブ的な役割を担う司書有資格者を採用し(1名)、中央図書館に配置し、市教育委員会学校教育課と連携して学校図書館の運用を支援してきた。

 市の政策として事業継続された要因に、”校長会からの強い継続要望”が上げられる。学校図書館の環境整備には”学校からの声”が大きな役割を果たしている。

具体的な活動内容

学校担当司書である志村さんの活動はとにかく、すごい。質的にも量的にも!

講習会は平成28年度上期で2回実施。使用する教材資料を3種作成。また、様々なQ/Aが日々、寄せられている。ほぼ、毎日のように、広い鳥海山のすそ野を車で駆け巡っている。

  

1.学校図書館運用の支援 

本の購入と除籍は”良書を整備、維持”するうえで大切である。が、ルールを決めて運用しないと悩ましいことにもなる。図書館では学校図書館資料の購入にあたっての留意点を作成し、学校へのアドバイスとしている。また、除籍についてのガイドラインもまとめ、学校で活用されている。いずれも、”内規”的な取り扱いであり、最終的な判断はそれぞれの学校が行っている。

※”購入”と”廃棄”の考え方はデリケートな分野であり、公表されにくい。図書館の好意で提供頂いた。

貸出、返却は学校からFAXで送られてくるリクエストカード(貸出依頼書)によって行っている。依頼に沿って最適な図書を調査。館内の蔵書検索や県立図書館の蔵書検索を行って可能な限り対応している。

配本は自ら運転する図書館の車で学校へ。そして、本を持ち帰る。学校との大切なコミュニケーションの機会でもある。

研修会の様々な講師も務めている。教育委員会学校教育課が主催している先生方や学校司書、図書館ボランティア向けの研修会や子どもたちの”手づくり絵本作成”などがある。学校司書の異動が多かった年度は開催回数も多く、一層多忙となる。

2.学校統合の支援

子供たちの減少に伴い、地方では学校の統廃合がすすんでいる。由利本荘市では、平成26年3月に3校を統合、岩城小学校が新設された。この事業では、学校関係者と共に、次のような取組を行っている。

  • 引越し前の資料整理
  • 新図書館への引越や環境整備のアドバイス
  • 資料の搬出、搬入
  • 資料の排架、ラベル張り替え、登録等

とにかく、学校の統合は一大イベント。周到な準備をして、短時間で正確に行うスキルと経験とチームワークが求められる作業である。

3.学校とのコミュニケーション

 ”学校連携”では、常に学校との良好な関係の維持・向上が欠かせない。年度当初は必ず館長と共に訪問し、先生方とコミュニケーションをとっている。(定期訪問)

 また、学校からの相談やQ/A対応で学校を訪問し、先生方や学校司書と具体的な対応策を図っている。また、この機会にさまざま情報を共有している。(随時訪問)

図書館紹介

中央図書館のシーンあれこれ

取材後記

「病院連携」は注目の新たな図書館サービスである。多くの病院では、待合室や面会室にさまざまな本・雑誌が雑然と置いてあり、しかもほとんどが古くて傷んでいる。しかし、患者からすると病院ほど、「本が恋しい・あの本を読みたい、こんな絵本がほしい」と強く思うところはない。図書館では市内の中規模病院と連携し、病院に本を貸し出すサービスを始めている。利用者は患者だけではなく、医師や看護師、医療技術者等、多忙な毎日をおくっている医療スタッフにも利用されている。選書の有り様や本の除菌対策など、新たな課題もあると聞くが、挑戦する姿勢・攻めの姿勢に感動を覚える。

“元気な公立図書館”ここにあり?

由利本荘市は新たなエネルギー分野でも注目されている。日本海からの強風を利用した風力発電。その巨大なプロペラ群は山並みに立ち並び、そして地下には国産石油の未来を拓くシェールオイル層の存在。風力発電にかかわる産業化も動き出した。さまざまなエネルギー関係の起業家にも期待が集まる。「知」のベースである図書館の重要性は、確実に高まっている。

(菅原)

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