福島県 白河市立小野田小学校

「ビブリオバトル」で表現力のある子どもに育てたい!

(2017年2月27日 取材)

所在地:〒961-0301 福島県白河市東下野出島字髪内195
TEL:0248-34-2169
E-mail:onoda-e@fcs.ed.jp
設立:1874年(明治7年)8月
児童数:88名 学級数:6学級 教職員数:18名
学校図書館司書1名(隣接する小学校と兼務)
(平成29年2月27現在)
◆白河市は平成17年(2005)に1市3村が合併して誕生した。小野田小学校は旧・東村に位置している。

教育目標

◆健康な子ども

◆すすんで学ぶ子ども

◆正しく判断し、実行できる子ども

◆思いやりのある子ども

学校図書館紹介

■図書基本情報

■統計データ

⑦標準図書数:文部科学省の定めた学校図書館図書標準。3000+520×(学級数-2)
⑪全国学校図書館調査の学校図書館用図書平均単価(平成26年度小学校1,755円)

(注1)充足率⑧:学校図書館図書標準冊数(文科省)による小野田小学校の蔵書数は5080冊で実際の蔵書数は6215冊である。学校司書配置後、除籍(廃棄)を行った結果であり、適切な充足率と判断される。
(注2)読書量⑩:全国学校図書館協会の調べによると、多読月である5月を単月で調査。全国平均11.2冊である。(雑誌やマンガも含む)

インタビュー

取材に対応いただいた
校長 菅野 学 様(中央)(取材当時)
司書教諭 富永 知香 様(右)
学校司書 甲賀 幸子 様(左)

学校の教育目標と図書館の具体的な活動等について、市長及び教育長に伺ってきました。

【校 長】

1.当校では4つの教育目標(健康な子ども、すすんで学ぶ子ども、正しく判断し・実行できる子ども、思いやりのある子ども)を掲げておりますが、平成28年度は「子どもの持っている力を発揮する」との意味を込めて、「自信と意欲と夢をもち、目標に向かって本気で取り組む児童の育成」を重点目標としています。この目標に沿った具体策として、「学校司書と連携した読書活動の推進」に取組んでいます。

(資料提供 白河市立小野田小学校)

2.学校運営にあたって、さまざまな形で地域から支援を受けています。 旧 東村(平成17年度の白河市と合併)の時代から、地域の人たちが「どんぐりの会」をつくって来校され、子どもたち(1~3生)に読み聞かせを行っていただいています。

(写真提供 白河市立小野田小学校)

また、ひがし図書館のうぐいす号(移動図書館)が月に1度、来校します。学校からも1~2年生が図書館を訪れて(年3回)、図書館を見学したり、好きな本を借りたりしています。中央館である白河市立図書館からは、市立図書館所属の学校司書が、随時本を借りてきています。白河市では平成27年度から、学校司書の配置を始めました。お陰様で学校図書館の環境が整備され、子どもたちにとって読書が生活の一部になりました。

3.図書館を活用したビブリオバトルを今年度から始めました。子どもたちは勉強もスポーツも一生懸命取り組んでいますが、自ら考えを述べる力、聴く力、話し合う力(プレゼンテーション力)を伸ばすことが必要だと感じています。ビブリオバトルを行ってみて、この能力を育む良い学習方法だと実感しました。今後もビブリオバトルに取り組み、子どもたちの学力向上に努めていきます。

ビブリオバトル本戦の様子
(写真提供 白河市立小野田小学校)

【開催時の工夫】

・本の紹介を2分、質問は1分とし、比較的取り組みやすい時間配分としている。
また、グループ毎に分け、一次、ニ次予選、本戦としていることで、全員参加が図られる。

・平成28年度は「宮沢賢治」の作品を題材とし、「読み込む力」も育む。

4.読書活動は「ティームティーチング」で進めています。また、保護者の皆さんにも子どもたちの読書成果をお伝えしています。

担任教諭、司書教諭、学校司書がチームをつくって、読書活動を進めています。学校司書は本を選んで子どもたちに紹介し、担任教諭は本の紹介の仕方やまとめ、司書教諭は授業での指導などを担当し、子どもたちの授業がつながるようにしています。

学校司書による紹介
(写真提供 白河市立小野田小学校)
担任教諭によるまとめ
(写真提供 白河市立小野田小学校)
学校司書による机間指導
(写真提供 白河市立小野田小学校)

また、保護者の皆さんには通知票と共に、読書の記録を学期毎に、お渡ししています。当校では、通知票とは別に「1年間のあしあと」と呼ばれる学習やスポーツの記録を記し、保護者の皆さんと子どもたちの記録を共有しています。その中に読書の記録があります。5年生ですと、年間目標は累計4000ページを読むことです。

(実際の記入例 資料提供 小野田小学校)

「1年間のあしあと」は、具体的かつ数値化した表現を用いている。表中にある定着確認テストは福島県が独自に行っている「学力テスト」であり、小野田小学校は着実に実施してきている。

5.メディアコントロールへの取組
白河市には「ノーメディアデー推進事業」があり、それぞれの地区でメディアコントロ ールに取組んでいます。東地区(旧・東村)PTA連絡協議会では、メディアに代わる 「読書の奨励」を目的として、月曜日を「メディアにふれない日」と定めています。この日は家族で時間を工夫し、読書に親しむ活動を進めています。読書には「家読」が効果的であることは承知していますが、家庭と一体になった活動はなかなか難しい状況です。

小野田小学校からのおすすめ本

No 図書名 著作者 レコメンド 主な対象学年
1はたらくじどう車
しごととつくり
小峰書店
編集部
教科書の「じどう車くらべ」にあわせて作られており児童が自分で説明文を作るのに適している。1年生
2ふたりはともだちアーノルド・
ローベル
教科書「お手紙」に出てきた「がまくん」「かえるくん」のお話で児童が興味を持つことができる。2年生
3落語・寄席芸大友浩日本の伝統芸能を楽しく学べて、読むことができる。3年生
4国語が楽しくなる
新美南吉絵童話集
あきびんご絵童話集で親しみがわき、新美南吉ワールドが広がる。4年生
5齋藤孝の親子で読む古典の世界齋藤孝初めての古典も抵抗なく親子で読める本である。5年生
6宮沢賢治のおはなし
(全10)
宮沢賢治教材の読み取りや、読書の幅を広げるための関連図書として効果的である。6年生

郷土の資料

No 資料名 著作者 レコメンド
1れきしら白河市建設部都市政策室
まちづくり推進部
白河市の歴史がイラストなどを用いて楽しく説明してあるので、子どもたちも無理なく歴史を知ることができる一冊。
2白河藩主
松平定信公物語
遠藤勝白河藩主だった松平定信公の伝記が小学生向けの読み物となっている本。

取材後記

箱根駅伝や長距離走・マラソンで活躍し、現在・駒澤大学で陸上競技部のコーチをされている藤田敦史氏は、小野田小学校の出身である。学校の玄関には、現役当時の雄姿が掲示され、子どもたちの誇りとなっている。

ビブリオバトルは、読書活動の一環として多くの地域や学校で盛んに取り入れられている。今までは、学校図書館の整備をすすめた上での活動であったように思えるが、ここ小野田小学校では図書館整備と並行しながらビブリオバトルを始めている。読書をしながら、表現力や発信力などのプレゼンテーション力を高め、また相互の理解力を高める手法として、教育的な効果が得られているようである。市内全域でビブリオバトル大会を開催し、地域の大切なコミュニケーションの場となっているケースもある。是非、この活動を成長させ、白河市の大会開催へと発展させてほしい。