八戸ブックセンター

市役所が新たなスタイルの書店を運営!!

(2017.03.03)

八戸ブックセンター

所在地:〒031-0033 青森県八戸市六日町16-2 Garden Terrace 1F
電話:0178-20-8368
HP:https://8book.jp
開館時間 11:00~20:00
休館日 毎週火曜(祝日の場合その翌平日)、1月1日および12月29日、30日、31日

所長インタビュー

所長の音喜多信嗣様
取材に対応いただいた
所長の音喜多(おときた)信嗣(のぶつぐ)様

八戸ブックセンターはどのような姿を目指していますか。

【所 長】

八戸市は第6次八戸市総合計画のなかの重点的に取り組むべき戦略の「人づくり戦略―教育プロジェクト」の中で「本のまち八戸」を推進しています。

市では乳児と保護者を対象に、読み聞かせの大切さを伝え、絵本をプレゼントする「ブックスタート事業」や市内小学生を対象にブッククーポンを配布する「マイブック推進事業」などを実施してきており、子どもたちを支援してきました。これらに続く事業として、主に大人を対象とした、「書店でもない」「図書館でもない」「行政が運営する新たな文化の拠点」として「八戸ブックセンター」を開設しました。

現在の書店や図書館を取り巻く環境には、さまざまな課題があります。本離れ、インターネットの急成長などで、書店の経営は厳しい状況にあります。このような環境の中で、提案型・編集型の陳列をすることにより、市民に本との偶然の出会いを提供し、本に興味をもって、触れて、そして、気に入った本があれば買っていただくといった、公共的で文化的な施設が必要だと思います。「本との出会い・触れ合い」行政が支援し、市内書店や図書館と連携しながら、本でまちを盛り上げることが目的で、利益を求めることではありません。このため、本の取り寄せは行っておらず、また、来館者の購入された本やニーズ、好みなどの情報は市内書店に伝えていきます。

また、市民の著作執筆活動の支援も行っています。施設内には、2部屋の執筆専用ブース(呼称は「カンヅメブース」)を用意しています。この中で、利用者は自由に執筆活動ができます。電子書籍での出版やその手続きなど専門家によるワークショップなども予定しています。かなり利用率が高く、好評です。「将来、八戸の作家として育ってほしい」、そのようなことを願っています。

また、今般、市が新たに採用した職員には、書店での長い勤務経験があり、作家や出版社とのリレーションがあるものもいます。このような人とのつながりを最大限生かし、講演会などのさまざまな文化活動も行いながら八戸を「本のまち」にするための活動を行っていきます。

このように「行政だからできる」ことを、立ち位置をぶれることなく進めてまいります。

開館されて、どのような反響がありましたか。

【所 長】

施設は市の正職員3名、嘱託職員3名で運営しています。また、書籍等の仕入販売業務などを市内書店で構成する組合に業務委託しており、組合のスタッフ4名も、シフトを組んで勤務しています。

12月に開館し4ヶ月になりますが、1日平均850名程の来館者です。

視察や取材の申込が多く、大変忙しい毎日でしたが、最近落ち着きを取り戻しつつあります。視察は主に、行政や議会関係者などで「まちづくり」を担っている方も多く、20~30団体の視察がありました。また取材は新聞社(全国紙、地方紙)、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアが主で30社ほどになっています。

「施設づくり」のいたるところに八戸市としての”こだわり”を感じます。

【所 長】

主な来館者層は高校生以上ですが、30代以上の方が多く来館されています。

陳列はテーマ別陳列を全面的に取り入れました。テーマ別陳列は手に取った一冊の本から次々と本との出会いが生まれる有効な手法です。作家別や分類種別ごとの陳列は行っていません。入門・基本図書棚である「知へのいざない」のほか、「人生について」などの大きなテーマの中に、「仕事」や「音楽」「スポーツ」等のテーマをちりばめ、八戸に関係するテーマも多く、取り入れています。また、一般公募による選書「わたしの本棚」や市内の大学、高専による選書など参加型の企画や、市内の教育機関と連携した企画も行っています。

施設ディレクションは内沼晋太郎氏(うちぬま しんたろう、ブックコーディネーター)にお願いしています。内沼さんは東京・下北沢で”本屋 B&B”という書店を開いています。月1回程八戸に来られ、さまざまアドバイスや新たなテーマなどを一緒に議論し、施設の改善や成長を図っています。施設のロゴマークなどはgroovisions(グルービジョンズ)さんにご協力いただいております。

BGMにジャズを使用していますが、大谷能生さん(おおたに よしお、八戸市出身)がセレクト。「ジャズの館 南郷(*)」にある数千枚のCDからの選りすぐりです。

*南郷:旧青森県三戸郡南郷村。2005年、八戸市と合併。ジャズのまちとして、知られている。

ドリンクは青森県産のものを中心にセレクトしています。コーヒーなどを飲みながら、本を自由に読むことができます。

また、作家・三浦哲郎さんが使用していた文机(レプリカ)や、遺族からの寄贈品を展示している読書席も設置しています。

どのような点にご苦労されましたか。

【所 長】

行政が本を販売することは前例がなかったため、関係者への理解や協力態勢作りなど粘り強く、丁寧に行いました。特に、大切な税金を使うことへの議論はさまざまでした。幸い、市長の掲げた「本のまち八戸」構想にさまざまな方々に賛同・協力いただき、開館することができました。

行政として今までにない考え方、取り組みです。また、イノベーションを感じました。
是非、この「八戸ブックセンター」を成功させてください。ありがとうございました。

市長からのメッセージ

八戸市長メッセージ
出典:八戸ブックセンター館内に陳列している「ひと棚」紹介パネル
八戸ブックセンターロゴマーク

八戸ブックセンターロゴマーク

二冊の本が寄り添って八戸の”八”を形作っている。
本はひとりで読むのが基本ではあるが、それでは終わらず、本と本、本と人の”つながり”をこの八戸ブックセンターで体験してもらいたいという願いを二冊の本にこめています。

参考

八戸ブックセンターホームページ(施設コンセプトページへリンクします)

取材後記

「買うより借りよう!! 」「シェアしよう!!」などの言葉を良く耳にする。しかしながら、 “思い出の一冊、自慢の一冊”を大切に持ってる人も多い。少々値段が高くても、自分しか持っていない、お気に入りの本を八戸ブックセンターで見つけ、「所有」されることもお勧めしたい。

新たな取り組みは、いつでも大変な努力がいる。とりわけ、行政が行うことには、さまざまな議論を巻き起こす。八戸ブックセンターが開設されるまでの努力は想像に難くない。「ともかくやってみよう!! 」この事業を応援していきたい。

(菅原)