山崎博樹氏

子どもの読書と学校図書館の役割

秋田県立図書館協会顧問・ビジネス支援図書案推進協議会副理事長・知的資源イニシアティブ理事・秋田大学非常勤講師・日本図書館協会認定司書。 様々な図書館改革を行うなど日本の図書館の発展に尽力されてきました。 今回は学校図書館と子どもの読書についてお話ししていただきます。

山崎 博樹 氏(やまざき ひろき)

秋田県立図書館協会顧問・ビジネス支援図書案推進協議会副理事長。

2016年3月まで副館長を務めた秋田県立図書館では、県立図書館の相互貸借システムを作り、相互貸借冊数を数十冊から数万冊まで増やすことに成功した。また、電子書籍サービスやデジタルアーカイブの開設、市町村図書館支援、学校図書館連携を率先して行うなど、図書館運営に尽力してきた。2000年のビジネス支援図書館推進協議会の発足後は、公立図書館のビジネス支援サービスの充実に尽力した。
現在は図書館サービスについての講演やワークショップを行うなど、図書館の活性化を目指して全国各地で意欲的な活動をしている。

子どもの読書

子どもの読書は学力向上や成人後の生活に大きく影響すると言われています。 全国学校図書館協議会の調査によると1カ月間に子どもが読んだ本は小学生が10.1冊、中学生は4冊、高校生 は1.7冊だったそうです。この調査からすると私たちが思っているよりも、子どもたちは多くの本を読んでいます。特に小学生はたくさんの本を読んでいますが、これは、両親、ボランティアなど関係者による読書支援活動が大きく影響していると思われます。一方、高校生になると小学生の2割弱しか本を読まなくなっていることにも気づかれるでしょう。背景には部活動や受験、就職活動といったさまざまな要因があります。しかし実際にはこの読書冊数の減少は、小学校高学年から徐々に始まっているのです。子どもの読書は年齢に応じてそれぞれのステップで行うことが求められ、特に高学年になると自ら本を選ぶようになり、その際に周りの大人のサポートや読書環境が関係してくるのです。

学校図書館の状況

子供の読書に一番大きな影響があるのが、最も身近な存在である学校図書館です。学校図書館法第1条では学校図書館は「学校教育において欠くことのできない基礎的な設備である」とされています。しかし、現実の学校図書館は、学校間で整備状況や人員配置などに大きな格差があります。例えば学校図書館の本は原則、日本十進分類法で並んでいますが、それでは子どもたちの関心を呼ばないこともあります。学校司書や熱心な図書主任がいる学校では、学校行事や学校生活などをテーマとしたわかりやすい図書展示が頻繁に行われ、たくさんの子どもたちが学校図書館を利用しています。このような活動はわずかな作業で実現できるのですが、人員配置が不十分な状況では、展示も充分に行われず、さらに本の廃棄も不十分のため、国名が違っている地図事典など、古い情報が書き込まれた図書が公然と並んでいて、調べ学習活動も困難となります。

学校図書館の今後

近年、国や地方治体は、学校図書館に司書教諭と専任の図書館職員である学校司書を配置することを推進しています。また、公共図書館と学校図書館が連携して学校図書館の環境整備を行ったり、学校図書館では不十分の資料を公共図書館から提供するようにもなりました。これらによって学校図書館の雰囲気は一新し、多くの先生達の関心を呼ぶこともあります。さらに、関係者の長年の悲願であった学校司書の職名が法律上に明記されたことも大きな前進と言えるでしょう。しかし、学校だけで十分な人員の配置や資料費の確保は、未だ極めて厳しい状況であることにかわりありません。学校図書館はいわば、毎日の手入れが必要なぬか床のようなものです。今、地域の力が学校図書館に求められています。ぜひ、多くの方々に学校図書館に関心を持っていただき、その重要性を理解いただければ幸いです。

関連サイト:全国学校図書館協議会

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