岩手県 平泉町立平泉中学校

図書室の環境を整備して、人を育てる世界遺産の街

所在地:〒029-0412 西磐井郡平泉町平字泉倉町23
電話 :0191-46-2205
児童数:184名 学級数:8学級 教職員数:26名
読書推進員:1名(町内 小学校2校と兼任)

教育目標

・自立(自己実現の努力)
・連帯(お互いの絆を強め、相互援助をする努力)
・開拓(進取の気性への努力)

<学びフェスト>
・人間の美しい心を伸ばす生徒
・確かな学力を身につける生徒
・希望をもって生活をきりひらく生徒

お話をいただいた副校長先生(右)と読書推進員の黒澤さん(左)

図書館基本情報

特徴

支える人たち

読書推進員が小学校2校と兼務で配置されており、毎週木曜日は平泉中学校を担当している。ボランティアはOBの方1名が活動されているとのことであるが、実質的には読書推進員が図書室の環境整備を行っている。

平泉町での読書推進員配置は昨年からスタートしており、読書推進員の黒澤先生は町職員であり小中学校をつないでいる。生徒さんたちとコミュニケーションをとりながら「如何に本を手に取って読んでもらえるか」の工夫や苦心がおすすめ本コーナーに表れている。

資料

蔵書数はおおよそ6,000冊。文部科学書の標準蔵書数の8割程度である。3年前に完成した現校舎に移転の際、図書を整理(廃棄)したことにもよるが、今後、教育活動の方針に沿って充実を図ることが期待される。

特設コーナーとして「中尊寺文庫」がある。世界遺産の中尊寺に関わる仏教や寺院等専門的な資料が配架されている。また、かつて中尊寺の貫主を務められ、作家・政治家としても活躍された今東光さんの資料(図書)もある。(氏と親交のあった作家の瀬戸内寂聴さんは、中尊寺で出家している。)

郷土の教育用に副読本「郷土・平泉学」があり、授業や校外での観光ガイド(キャリア教育の一環)等で活用されている。このように教育活動の方針と資料の関連性があると資料の整備方針が分かりやすい。

図書室の環境

2012年に校舎を新築。図書室も校舎の中央に配置したオープン設計。図書室の重要さをアピールするデザインとなっている。

新刊本の紹介コーナーや1年生が作成した力作の’書評’の掲示、「中尊寺文庫」の専門コーナー設置等、特色のある図書室の環境整備は進み始めている。今後、社会に目を向ける全国紙(新聞)や専門雑誌等、中学校ならではの特設コーナーも検討されるとよい。

蔵書の自由な検索は学校現場でも一般的になりつつある。また、図書室のシステム化、ネットワーク化は各地で整備され、図書の環境が改善されてきている。小中を兼務されている読書推進員とICTの活用によって小中がつながる、地域がつながる図書教育を期待したい。

図書室紹介

オープン設計の図書室と新刊本の紹介コーナー
1階、校舎の中央に配置。開放感にあふれている。
選書された「おすすめ本」を配置。
読書推進員苦心の新刊本紹介ポップ
読書推進員の「本への思い」が満載。
1年生による力作の書評
書評を書くことも大切な読書教育。
蔵書、配架の充実はこれから?
太宰治、宮沢賢治も整備中。
「中尊寺文庫」専門書コーナー
お寺や仏教について学べる専門書。
今東光さんの文庫本
「藤原四代」を描いている。 
郷土教育に使用されている副読本「郷土・平泉学」
これ一冊をマスターすれば、あなたも平泉学検定に合格?

平泉中学校からのお勧め本

No図書名著作者レコメンド主な対象学年
1鹿の王上橋 菜穂子命をどうとらえるか。そして、自分は人に何ができるのか。
それぞれが自分のできることをやればいいと思わせてくれる本。
1~3年生
2炎立つ高橋 克彦奥州藤原氏と平泉の歴史がよくわかる。
苦しくとも諦めない清衡に感動。
3年生(難しい)
3芥川 龍之介ユーモラスな内容の中に、自己顕示欲が見え隠れする本。1~3年生
4岳物語椎名 誠父親と息子の岳君とのやりとりがとても暖かい。
こんな父と息子でありたいと思う本。
1~3年生
5世界で一番美しい元素図鑑セオドア・グレイ写真の美しさ、解説の面白さ、科学に興味が無い人でも夢中になってしまう本1~3年生

取材後記

平泉中学校は筆者の母校である。(とはいえ、昔々に遡るが。)校舎は移転、新築され近代的なデザイン。思い出の板張り教室を思い出し、少々感傷的になった。
学校司書の配置が進んでいる。平泉を含む岩手県・県南地域ではほぼ配置を終えている。やはり学校司書が配置されると、図書環境が一変する。今後、さらに環境整備は進むであろう。後輩達には社会に目を向け、活動する”作戦基地”として図書室を上手に活用し、次の平泉を支える人材に育ってほしい。(菅原)

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