東京都 小平市立仲町図書館 ―学校図書館支援―
市内全27の学校図書館を包括・支援する地域図書館とは
(2017年6月27日 取材)
所在地 〒187-0042 東京都小平市仲町145
TEL:042-344-7151
FAX:042-344-7152
E-mail:fa0071@city.kodaira.lg.jp
HP:http://library.kodaira.ed.jp/facility/nakamachi.html
小平市と仲町図書館
◇小平市は東京都多摩地区の北部に位置する人口19.2万人、面積20.5㎢の市である。 玉川上水によって、開発された多摩地区。その武蔵野台地に広がる小平市は、周辺のまちと共に広域行政を展開。戦後、「多摩地域」として急速に発展した。また、都市近郊型農業も盛ん。バレーボール、サッカー、野球などへ多くのアスリートを輩出しており、FC東京の活動拠点にもなっている。
◇学校図書館を支援する仲町図書館は公民館なども入る複合施設「なかまちテラス」として平成27年末に完成。デザインは建築家 妹島和世 氏。プリツカー賞を受賞するなど、世界的に著名な建築家として知られ、その斬新なデザインが青梅街道に映える。
◇小平市の学校数は小学校19校、中学校8校、特別支援学校1校(公立)がある。
図書館の位置づけ、組織
- 小平市の市立図書館は8館、分室3館があり、中央図書館が全体を総括している。
- 学校図書館の連携事業は、仲町図書館が中心館として担当している。
※図書館見学、職場体験、調べ学習の配送便などは、最寄りの館がそれぞれの担当の学校を受け持っている。
市立図書館の基礎データ
(注1)仲町図書館は改築のため、平成24年2月1日から休館。平成27年3月14日にリニューアルオープンしている。受入冊数はH23~H27の5年間の累計冊数であり、そのままH27の蔵書数となっている。
(注2)仲町図書館の本格的な貸出はリニューアル後となっている。学校貸出冊数は学級本が主。
(注3)小平市立図書館統計は、毎年、上期中に公表される。(H28)
学校図書館支援、これまでの歩み
◆平成16年
「社会教育活性化21世紀プラン」を活用し、学校図書館蔵書管理システムを開発。また、「小平市子ども読書活動推進計画」を策定
◆平成17年
小中学校全校の学校図書館蔵書データベース化。
◆平成18年~平成20年
「学校図書館支援センター推進事業」(文科省指定事業)にて、学校図書館協力員を全中学校に配置。以降、継続配置。
各校へ調べ学習や授業支援のための貸出に配送便を設ける。
※国の「学校図書館支援センター推進事業」は平成20年度にて終了している。また、本サイトではこの国の事業を適用した青森県八戸市、岩手県一関市の記事が公開されている。
◆平成18年~継続
・学校図書館相談員を配置。
・図書館に学校図書館協力員を配置し、順次学校を訪問。学校図書館の運営・整備の相談業務を実施。
◆平成22年度~継続
小学校、全校に学校図書館協力員を配置。中学校と併せて、全校配置が完了。
◆平成26年
◆平成27年度末
仲町図書館がリニューアルオープン。学校支援を包括的に担当する図書館として活動を本格化。
インタビュー
渡辺 房江 様(学校連携担当)、中澤 恵子 様(学校図書館相談員)、君山 三紀 様(学校図書館相談員)に、ご説明頂いた。
◇市立図書館の学校図書館連携サービス概要
子ども文庫は図書館の出発点
多摩地区は、「子ども文庫」が盛んな地域で、子どもたちへの読書活動の推進力となった。家庭や団地などでお母さん達が中心となって会を運営。小平市においてはその後の公立図書館の建設につながっていった。昭和47年には、小平市子ども文庫連絡協議会を発足している。現在、子ども文庫は、あかしあ文庫、はらっぱ文庫、あすなろ文庫、ポプラ文庫の4文庫と賛助会員とで運営されている。学校との連絡会議には、子ども文庫役員も出席。図書館関係者との議論を深め活動をしている。
図書館見学・職場体験学習の受け入れ(各館で実施)
全8館で対応している。希望校からは図書館見学が主に小学2年生、職場体験は中学2年生を受け入れ。職場体験学習は生徒の希望選択制で、各館で3~4名ほどの生徒が図書館のカウンター業務やバックヤード業務を体験。体験後にお礼の手紙なども届き、励みにもなっている。
学級文庫への本の貸出(仲町図書館で実施)
昨年度(28年度)からその役割を仲町図書館に集約。希望校に対してサービスを行う。団体貸出の取り扱い単位はクラスで50冊、4~5月に貸出。年度末までの1年間、貸出されるが、各学年の全クラスに行き渡るよう、各校で工夫してローテーションして学級文庫を活用。選本(選書)は、お母さん方や先生方、学校図書館ボランティアが仲町図書館に来館して行っている。
夏休みおすすめ本のリスト配布(各館で実施)
市立図書館の児童担当が選本(選書)し、そのリストを事前に担当する各校に配布し、読書を推進。(小平市では20年以上前から行っている、歴史ある活動。リストは毎年、更新される。)おすすめ本は館内に別置。
小中学校からの推薦本リスト本の別置(各館で実施)
学校からのおすすめ本リストを担当する市立図書館に提示し、図書館ではこの推薦本を別置し、ブックトラックなどに展示。図書館を利用する子どもやお母さん方に大変好評である。
学校図書館との連携・人の配置や情報共有、研修など(仲町図書館が担当)
小中学校の図書館担当教諭と図書館関係者との連絡会議(年1回、毎年7月)。情報共有と交換が目的。この会議には子ども文庫役員も出席する。
学校図書館協力員の配置は選考事務や予算を含めて仲町図書館が担当。すでに小中学校27校すべてに配置済み。勤務は週3日、5.5時間/日、年105日である。勤務する学校の異動もあり、経験年数は新人~8年である。
学校図書館協力員の研修カリキュラムは豊富。ブックトーク、読み聞かせ、ビブリオバトル、レファレンス、学校図書館システムなどが用意されている。学校図書館協力員は研修の成果として、小学生向けに「読み聞かせ絵本リスト」を作成している。レコメンドやおおよその読む時間等、良くまとまられている。これは、貴重な資料で、各方面で活用できる。
仲町図書館には学校図書館相談員が2名配置されており、随時、学校を訪問し、さまざまな相談や支援にあたっている。
教育委員会の指導課主催で、司書教諭等連絡協議会も年3回開催されており、学校図書館協力員、学校図書館相談員、学校連携担当も参加している。学校図書館には先生方の理解と実際の活用が最も大切。相互のコミュニケーションの場としても欠かせない。
調べ学習のための特別団体貸出(各館で実施)
小平市では「調べ学習」を重視し、各館から調べ学習用の特別団体貸出を行っている。平成27年度は、小学校向けに14610冊、中学校向けに664冊、貸出されている。「調べ学習用」として、制度が設けられているのも小平市の特徴。
ブックトーク等への支援
学校からの依頼により、ブックトークを行っている。平成28年度は延べ10校で実施。対象は全校や学年、クラス、支援学級等であるが、図書館の学校連携担当や児童担当者、学校図書館相談員が学校に出向いている。
◇市立図書館の学校図書館支援状況
館長に学校図書館協力員への期待を述べていただいた。
【館 長】
学校図書館支援において一番核となる部分は、学校図書館協力員のスキルを育て、学校図書館で活躍してもらうことです。小平市の学校図書館協力員にはベテランがおりますが、新人もおります。(ベテランと新人の交流を盛んにして)人材の底上げを図り、学校図書館で活躍してもらうことで、子どもたちの学習支援につなげていく。それが仲町図書館の役割だと思っています。
取材後記
駅を降りて青梅街道を仲町図書館方向に歩いていくと、庭先にブルーベリーを植えている家庭を良く見かける。ちょうど、6月ごろに群青色の実をつける。生食でも、ジャムでも、そして多くのスイーツにもよく使われている。また、目にも元気を与えてくれる効果がある優れものでもある。このブルーベリー、ここ小平市が栽培の発祥地だと館長が教えてくれた。産直には多くの野菜と花木に囲まれて、ブルーベリーが並んでいる。直取りが楽しめる農園もあるらしい。大都会、東京の郊外で出会えた「食と農」。図書館でも多く見かけるテーマでもある。
(菅原)