第25回図書館総合展フォーラム(2023年10月24日)開催報告

図書館をどう評価して次に繋げるか ~事業分析・スキル継承~

第25回図書館総合展フォーラムにおいて、「図書館をどう評価して次に繋げるか ~事業分析・スキル継承~」と題して、下記の通りフォーラムを開催しました。その様子をお伝えいたします。

開催概要

皆さまの図書館や所属している団体では、どのように「事業評価・分析」「スキル継承」を行っていますか?

文部科学省で掲げられている「図書館政策の在り方」を実現するために、図書館では様々な具体的施策の実施が必要となってきています。
・行政へのPRや予算獲得
・年次計画の作成     など
これらの施策を達成するために重要である以下の点について、皆さまは、どのような取り組みを実施されていますか?また、現場での課題は何でしょうか?
・事業の評価、分析方法
・スキルの継承
本フォーラムでは参加者の皆さまと意見交換をすることで、次世代へつなげていくヒントを探っていくためのグループディスカッションを行いました。

日時

2023年10月24日(火)13:00~14:30

場所

パシフィコ横浜 アネックスホール 展示会場2階(E25)

アドバイザー

りぶしる委員会委員長、知的資源イニシアティブ代表理事
山崎 博樹 氏

千葉大学特任教授
神代 浩 氏

ファシリテーター

由利本荘市中央図書館 館長補佐
古川 淳 氏

横手市立図書館 横手図書館 司書
石川 靖子 氏

内容

  • オープニング
  • グループディスカッション
  • ディスカッション内容の共有​
  • アドバイザーからのコメント
  • クロージング

グループディスカッションの様子

ディスカッション内容の共有​の様子

Aグループのディスカッション内容

イベント企画の課題​
 ・場所が無い(施設的な問題)​
 ・予算取りが難しい​
 ・担当が個人単位で余力が無い (属人的に動いている​)
  ➡組織的に動きたい

連携は人脈でつながっていく部分もある。
連携前に人とつながっておくことが大切。市民協働も大切。​


Bグループのディスカッション内容

図書館の評価について
・具体的な数字を出せと言われるが、アピールできる数字が出しづらい
・研究員が利用しているが、数字に反映されていない
 ➡ 上長に図書館の価値をアピールできる説得材料が欲しい

評価の課題
図書館の評価を短期間で変えることは難しいため、長期間で評価を向上させていく為にどうしたらよいか。​

継承について
内部評価(講座の実施や利用者のアンケート結果)とイベントの​実施を複数人の担当で行うことで継承につながると考える。

Cグループのディスカッション内容

図書館に対する評価
コロナ禍の時は当たり前のことをやっているのに評価されない。新しいことをすれば評価されるが、継続が難しい。​

図書館の評価指標について
住民からの評価や感想など良い評価をもらう(定性評価)が財務や図書館を利用していない人からすると、数字だけで判断されてしまい定性評価を伝える術がない。

協働ボランティアでは終わらないため、自分事として良くしていくために​作り上げていくことが必要。​そのためにはこういうディスカッションの場を通じて高めて​いけたらいい。​

Dグループのディスカッション内容

図書館の評価について
【利用者目線】
「静かさ」「資料を利用する場」「居場所(休憩所、便利さ)」など、 場所としての図書館を求める。
【経営者目線】
利用者を増やす=学生を増やす「PR」としての場所。数字は利用者の数、利用されている資料の数を示す。そのため、どうやって利用してもらうかが、評価として必要な点だと思われる。

継承について
現状の継承は口伝が多いが、それだと効果はあるが限界がある。そのため、紙やマニュアルが必要。しかし、最近の人は読まない。伝え方は文字だけではないので、動画なども駆使して継承する必要がある。

「見える化」することが継承の最大のキーワードだと考える。「見える化」して外に広がることで「アウトカム」にもなるし「継承」にもなるし「評価」にもなる。​

アドバイザーからのコメント

アドバイザー 神代 浩 氏からのコメントの様子
アドバイザー 山崎 博樹 氏からのコメントの様子

神代 浩 氏からのコメント

【評価に関して】
 図書館だけでなく企業や地方自治体でもどんな仕事をしていても評価というものは避けられません。
 また自分の業務や組織をどう評価していくかとなったときに、「数字」も避けて通れません。業務の中身によって「数字」による表現がしやすいものもあればそうでないものもあると思います。
 図書館の業務やサービスは、一部数字で表現できるものもありますが、それだけではしきれない部分があります。それをどのような指標や手段で補っていくかが大事なところだと思っています。
 これを解決していくのは難しいですが、少しでも改善していくためにお勧めする手段は、『思い切って異動願いを出す』ことです。
 違う部署にも必ず評価があります。そこではどういう指標を作り、どのような評価をしているのか…。違う部署でも図書館と同じ悩みを抱えており、そこではどう解決しようとしているのかを学んで戻ってくるとまた違う戦略を立てられるのではないかと考えています。
【継承について】
 Dグループにも出てきた「マニュアル」を不十分でもいいから作るところから始めましょう。気が付いた人が書き加えていくことで、おでんの出汁を注ぎ足していくように、充実させていけると思います。

山崎 博樹 氏からのコメント

山崎さんコメント
【評価について】 
 現場からの評価、経営からの評価、住民からの評価と、三つの視点がありそれぞれ観点が違いますが、受け止めなければなりません。
「アドボカシー」という言葉はご存知でしょうか。これは、住民からの「支持」であり、支持をされると評価は続きますよね。良い図書館の活動をし、アドボカシーが生まれると支持されます。必要だと分かれば「人」「お金」として還元されますが、これは一年で評価されるものではないので、継続性が必要です。
【継承について】
 マニュアルは与えられるものではなく、自分たちで作っていくものだと思います。職員同士でまず体系を作っていく、あるいは、アイディアを重ねていくなど何年かかけて知恵を働きかけていきましょう。ただのマニュアルでは伸びていかないため、経験や知恵をどのように共有していくか、そして知識から知恵に変えていく作業が大切だと思います。
話は変わりますが、今の図書館システムに不満は無いでしょうか。今のシステムは本の情報しか出てきませんよね。イベントをやってもそれが可視化されていません。この「可視化」という作業が上手くできておらず、だから評価もされにくいのだと思います。イベントの中身やそこから生まれるアウトカムが大切であり継承するべきものだと考えますので、可視化に向けてはシステムベンダーに頼り、本の貸出や利用だけでない部分をどう可視化し、世へアピールするか… 難しい話であり結論が出るものではないですが、職場に戻ってもう一度この話をしてみてください。
みんなで話すことによって解決の一歩目になると思っています。