郷野目香織 氏

地方在住の司書が思うこと~人との繋がりが図書館を光らせる~

郷野目様

郷野目 香織 氏(ごうのめ かおり)

新庄市立図書館勤務、指定管理者である一般社団法人とらいあ所属
2023年2月より日本図書館協会代議員(山形県・個人会員選出)
玉川大学通信教育課程で司書資格取得・同文学部教育学科卒業(2006年9月)
図書館地区別研修(北海道・東北)修了(2009年度)
日本図書館協会中堅職員ステップアップ研修(1)(2)修了(2012/2015年度)
日本図書館協会認定司書第1124号(第7期・2017年度)
第22回ビジネス・ライブラリアン講習会修了(2022年度)
母校である山形県立米沢女子短期大学の総合教養講座で、2018年度より年1回ゲスト講話

【事例発表】
2017年度全国公共図書館研究集会(サービス部門 総合・経営部門)/北日本図書館連盟研究協議会で『「マルシェ 本活(ほんかつ)プロジェクト」青空の下で本を楽しもう~本と人をつなげる 出前図書館~』を、髙橋一枝館長と共同発表
【執筆】
『認定司書論文のたまてばこ~図書館論文がスラスラ書ける!~』(郵研社・2019年出版)
「第2章 ぴかぴか認定司書の論文体験談 8人からのエール!」pp.38-44「地域の宝×まちづくり×公共図書館について考えた7ヶ月」

指定管理者・非正規雇用・会計年度任用職員の方々の多くは、公務として専門研修を受けられる機会は少ないと思います。さらに地方在住ともなれば、全国規模の研修・講座の情報が実務の現場まで届きにくく、届いても遠方への宿泊受講は費用面で諦めざるを得ない…と幾重ものハンデを抱えています。

施設の新旧にかかわらず、人が育てば図書館にも特色が出ます。地方在住の司書のスキルアップ・キャリア形成が、ひいては地域住民が生涯学べる居場所を存続させるための支柱となるはずです。

私が所属する一般社団法人とらいあ(山形県新庄市)は、「豊かな生涯学習社会を促進し持続可能な社会づくりに貢献」する目的の元に、現在は公共施設2館の管理運営事業等を中心に学びのネットワークを推進しています。新庄市立図書館の一部業務委託から始まった小規模市民団体が、3年目からは指定管理者事業を受託・更新し続けて、今年2023年で創業16年、法人設立13年を迎えました。団体プロフィールブックの1ページ目には「人に、まちに、学び場を。日々に豊かさを。」の一文を掲げていますが、とらいあ理事・職員もまちの一員であり、地域住民と共に学び心豊かに暮らすための人材育成事業も担っています。

当館には司書や学芸員がいますが、直営時代にパートタイム採用された当時は司書資格を持っていなかった私の経歴は、異色の変わり種です。司書資格取得してから6年目に、公費で図書館地区別研修を受講するチャンスに恵まれ、その基調講演で耳にした「来年度に日本図書館協会認定司書事業の第1期が認定されます」との言葉にビビビッと打たれました。国家資格である司書には、実務経験が認められる上級的な資格が無いので、指定管理者職員として心細かったのでしょう。「認定司書を持つ職員がいれば、とらいあの対外的な知名度や信頼感アップにも繋がるはず!」

そこから家族・上司・同僚の理解と応援を受けて、井の中の蛙が大海へ飛び出し、東京での長期研修では素晴らしい講師陣と全国の熱意ある図書館員に出逢いました。専門的な内容以上に最も大きな学びだと感じたのは「人と繋がる大切さ」です。「図書館の顔である司書は名刺を持ちましょう」と教えて頂き、自分なりに名刺交換以上の交流を目指したところ、新しい縁を引き寄せ、当館への視察見学が増えたり全国連携展示のお誘いを頂いたりと、図書館のメリットにも繋がったとの手応えを感じました。

こうして当館職員たちが、多彩な手段でスキルを増やし縁を繋げた結果、東北の小さな図書館が唯一無二の個性を持ったのです。キーワードは「クラゲ」と「直木賞作家」…詳しくは髙橋一枝館長へバトンを渡します。