鳥取県 鳥取大学付属特別支援学校

マルチメディアDAISY図書について

鳥取大学付属特別支援学校 マルチメディアDAISY
鳥取大学付属特別支援学校 DAISY図書

知的支援学校の図書館でDAISY図書があるのは珍しいですね。

【児 島】

本校の子どもたちは、なかなか活字だけでは読書の楽しさが味わえない子どもが多いです。少し落ち着きのない子どもで、なかなか活字を追って読書できない子どもにとって、DAISY図書のハイライト機能はとても便利で有効です。DAISY図書は耳から音声が、そして目からは文字や絵が同時に入ってきますから。

本校では、プロジェクターと大型スクリーンも整備してもらいました。 自閉症スペクトラム障害の子どもなど、聴覚だけでは意味が理解できない、視覚優位(目で見てわかりやすい)の子どもたちが多くて、音声を聞きながらハイライトされる活字を読んで、また絵を見て読書の楽しさを味わえる子どもたちも多いです。また、小さい本だと注意が集中できませんが、大きなスクリーンだと映画館のようで、集中して見ることが出来ます。

鳥取大学付属特別支援学校 図書館にあるプロジェクター

図書館にプロジェクターっていいですね

【児 島】

絶対いいです。読み聞かせもいいですが、大きくなった中高生たちは、大人だという意識とプライドを持っているので、そういう意識を大事にしています。パソコンで読む読書って、なんかかっこいいというのもあります。

ICTのよさってそこにありますよね。子どもたちが受け止めやすい、かっこいいからということで。

【児 島】

そうですね。人に読んでもらうことは、小さい子は大好きだからいいですが、ある程度大人になると嫌がる子もいますから。

DAISYで工夫していることはありますか。

【児 島】

CD1枚に1タイトルのデータを入れて、ケースの表紙も本と同じ表紙を入れて子どもたちが選びやすいようにしています。
情報教育主任にも協力してもらい、学校図書館の検索用パソコンに圧縮データを入れて、一人一台タブレット端末を持っているので、自分のタブレット端末に読みたいDAISYのデータを入れることができるようにしています。
各自でイヤホンを持っていて、教室で、朝読書の時間にタブレット端末を使ってマルチメディアDAISY図書を読んでいる風景も時々見受けられます。

普通の学校図書館よりずっとハイテクですよね。

【児 島】

特別支援教育はICT活用が特に大事。図書館も情報教育と連携するのがすごく大事です。

音と絵とか両方出てくるのがマルチメディアDAISYのよさなので、ICTは一番いいですよね。本は自分で飛び込んでいかないと難しいところがありますが、ICTはその点テレビに近い。やっぱり可視化してあげないと分かりづらいですね。

一種の電子書籍ですよね。学校図書館って一般よりむしろ親和性が高いんじゃないかなと思うんです。今なかなか学校図書館向けの電子書籍って少ないです。特に学校図書館にはアナログの本と電子書籍の両方あった方がいいと思います。

学校図書館の「人」について

鳥取大学付属特別支援学校 司書の方々

学校司書は繋ぐ役目。いるといないでは違いますよね。

【児 島】

全然違います。私(司書教諭)一人ではなにもできません。学校図書館運営は、司書教諭と学校司書の協働がなければできないと感じています。

学校司書が何をしているのか分からない人が多いので、現実に暇だろうという教育関係者もいます。バックヤードや連携部分をまったく見ていないのでそういう話になるのかもしれませんね。

【児 島】

図書館機能というものをもっと知ってもらう必要がありますが、教育の中で学校図書館を使うということ、先生方が図書館の使い方や図書館機能をちゃんと知るということが大事だと思っています。教員になる養成課程で図書館の講義を入れてほしい気がしますね。さらに特別支援教育でどう学校図書館を活用するかというのも入れてほしいなと思います。

鳥取大学付属特別支援学校 進路情報コーナー

図書館教育というのは、教員や司書を目指す人だけではなくいろいろな人に必要です。そうすればもっと図書館の理解や活用の仕方があると思います。

【児 島】

はい。子どもたちにその重要性や使い方をずっと伝えていかなければ、社会人になってから使えと言われても使えないですよね。

特に教員が図書館を使えないのでは、悲惨なことになりますよね。なのでまず先生がしっかり図書館のことを学んで欲しいですね、子どもたちにも。そうすれば図書館の理解度も、学校の中で高まっていくでしょう。

司書教諭の資格を持った方が6人もいらっしゃると聞いて、やっぱりやりやすいだろうと思いました。周りの理解を得やすいし、味方がいるって大事です。

【児 島】

校長先生や副校長先生をはじめ、他の先生方にも図書館の取り組みについて理解していただき、少しずつですが、実践を積み上げています。

【副校長】

私は小学校教諭出身なのですが、小学校は教科書で学ぶことがいっぱいありますが、本校に赴任してきて、学ぶ量が非常に限られていて、生活に必要なことが中心の学習内容になってしまいます。
でも「学ぶことはすごく楽しいよ、世界は分からないこと、知らないことだらけ。だから学びも生活も楽しもう。」ということで学校の中で花を育てたり、近くの日本一大きい池で毎朝写真を撮ったりしています。
元旦にカワセミに出会い、それから行くのを習慣にして写真を撮っていると、美しい風景が沢山ある。美しい風景や物に出会うと、美しい言葉に出会い、そこで思い浮かぶ本がある。また、本から描き出される美しい風景もあります。
この循環を作りたい、サイクルにしたいというのがあって、自分の好きなことに子どもたちがどんどん興味を持って関心を寄せると、それは世界につながっていく。ひとつのことからどんどん世界が広がっていくので、そういう学びができたらいいなと思っています。

本だけに留まらずに、自分の周りの世界にリンクしていくということ、それがフィードバックされていくんですね。

【副校長】

湖山池に水鳥が来れば写真に収め、その写真を見せながら、「大造じいさんと鴈」「オオハクチョウの空」とかそういう好きな本を紹介する。そこに書かれている素敵な言葉、例えば”紅”とはどんな色かなと調べてみる。赤でもいろいろな色が自然の中にあることに気づくと思います。

たとえ絵本に”紅”と書いてあっても分からないですね。

【副校長】

美しいものや変化するものに出会うというのは、美しい言葉や変化に富んだ言葉に出会って心豊かになってくのではないかなと思います。そこにこういう学校司書や司書教諭が必要です。

知らない方も多いですから。自分たちには常識だが、外から見れば非常識のように見えたり。だから認められず、悩んでしまうの繰り返し。発信していないという責任もあるので、私たちも情報を広げるお手伝いをできればと思っています。

【児 島】

よろしくお願いします。特別支援学校の図書館についてたくさんの方に知ってもらい、特別支援学校の図書館にも「人」が必要だということを一番伝えてほしいと思います。

鳥取大学付属特別支援学校 配架や展示紹介

鳥取大学付属特別支援学校 展示の様子
鳥取大学付属特別支援学校 配架
鳥取大学付属特別支援学校 配架
鳥取大学付属特別支援学校 展示物

鳥取大学付属特別支援学校からのおすすめ本

No 図書名 著作者 レコメンド 主な対象学年
1サファリ
しかけえほん
ダン ケイネンふしぎ!ふしぎ!ページを開くと動物が動き出す新感覚のしかけ絵本。
見て楽しめる絵本です。
小・中学部
2コミック版
日本の歴史シリーズ
ポプラ社マンガなので、場面の状況が視覚で把握でき、歴史に興味を持っている生徒にとっては、内容をより深く理解できます。中・高等部
311ぴきのねこ
(マルチメディアDAISY図書)シリーズ
馬場のぼるどのタイトルの図書も分かりやすく楽しめる話。
音声が流れている文字の部分がハイライトされるため、集中しやすいです。
中・高等部
4LLブック
わたしの家族
LLブック制作グループ1タイトルが4~5枚の写真で構成されており、家族エピソードを写真だけでやさしく読める本に仕上げてあります。小~高等部
5科学読本
サバイバルシリーズ
朝日新聞出版小学生の主人公目線で描かれています。ルビつき、オールカラーの漫画で描かれていて、理解しやすく、知識が広がるシリーズ本。中・高等部
6Cook pad
料理雑誌
扶桑社調理手順が、写真でわかりやすく載っています。
学習で調理をすることが多い特別支援学校では便利です。
小~高等部

よく読まれている本

No 資料名 著作者 レコメンド
1学研の図鑑学研様々なジャンルの図鑑シリーズ。
写真がいっぱいで特別支援学校には欠かせません。
2ひみつシリーズ学研知りたいと思っていることをマンガで解説したシリーズ本です。
3るるぶ情報版
シリーズ
学研見ていて楽しくなる旅行雑誌。修学旅行等の調べ学習にも使えます。

(取材:山崎)

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