岩手県 二戸市立金田一小学校

朝読は毎日、昼は図書室で自由にのびのびと

所在地:〒028-5711 二戸市金田一宇野月19-2
電話 :0195-27-2201
設立 :明治9年5月1日(1876年)
児童数:212名 学級数:10学級 教職員数:19名 
学校図書館支援員:1名(二戸市全小中学校で3名、巡回型)

(平成28年2月16日現在)

教育目標

「学びをつなぎ 考えをつなぎ 心をつなぐ子どもの育成」
(学びをつくる子、心をつくる子、体をつくる子)
併せて、「家庭との協働、地域との協働」を掲げる。
読書教育として、
・学年ごとに読書目標冊数を掲げ、「朝どく」や、フィード
バックタイムを活用しての読書をすすめている。

お話をいただいた菊地先生(左)と学校図書館支援員の夏林さん(右)

図書館基本情報

2016年2月18日現在

特徴

支える人たち

市の教育委員会や市立図書館、(学校)図書ボランティアとの連携を図りながら図書館活動を行っている。朝読は毎日15分間を徹底。昼は子供たちが図書室に集合し、友達や先生と自由にコミュニケーション。制約や決まり事を意識することなく、のびのび時間を過ごしている。昼時間は子供たちに遊びの時間を望まれる保護者の意見でもあるとのこと。メリハリのある時間の使い方は大切であり、先生方の方針でもある。

学校図書館支援員の活動が図書室の整備や運営に大きな役割を果たしている。二戸市では3名の学校図書館支援員で市内小学校8校、中学校4校を担当。取材に対応頂いた夏林さん(公的司書資格を保有)はそのリーダー的存在。朝、市の教育委員会に出勤後、教育委員会や仲間とのミーティングを行って、各校を訪問。勤務表にはぎっしりと学校の訪問予定で埋まっていた。関係者との情報共有を図りながら、先生方とチーム力をもって図書室活動を支えている。図書ボランティアさんは朝読を主に担当されており、活動時間は重なっていないことも効果的。また、子供たちとのコミュニケーションを大切にして、接する時間を多く割いている姿も印象的であった。

資料

蔵書数は8,500冊程度であるが、卒業生が寄贈した冊数(子供たちが興味を持つ本が中心)も含まれている。子供たちに読んでほしい本の観点から見ると標準図書冊数には不足気味。蔵書の充実を期待したい。

特設コーナーにはエッセイストで絵本作家でもある澤口たまみさん(盛岡市出身)のコーナーがある。昨年の岩手県学校図書館協議会の研究大会を当校で開催し、その時に記念講演をいただいたとのこと。作家の方から直接お話を聴けることは、感動もまったく異なり、記憶として残る。常設コーナーへ発展させてほしいものである。

地元紙の新聞(子どもニュース)をおいている。他の小学校では見かけない。子供たちはどのように読んでいるのだろうか。期待が膨らんだ。

「一人ニ冊、本をプレゼントするコーナー」がある。昨年度、市からプレゼントされる企画があり(図書費での購入)、子供たちの要望で好きな本がもらえる。乳幼児にはブックスタートと呼ばれる事業を行っている市町村はあるが、児童・生徒(小・中学生)へのプレゼントは、初めて知ったケース。継続性はよくわからないが、質的な蔵書につながるならば、歓迎される。(卒業時に寄贈されることも期待。)

図書室の環境

それぞれの学級には学級文庫があり、年4回40冊程度市立図書館から、選書された配本がされる。また移動図書館「かっこう号」も月2回運行されており、市立図書館の協力により、実質的な蔵書の補完がされている。

図書室はニ室。卒業生からの寄贈本を中心に配架されている「よみよみルーム」(たたみコーナー付き)とオープン利用型の「図書ホール」(子供たちの集まりの場)。ポップや各種の掲示物など、丁寧に作成されている。特に掲示物は図書ホールにギッシリと貼り出されており、こちらを読むだけでも楽しい。また、窓は黒の切り絵で全面飾られており、ファンタステック。絵本の世界が表現されている。

図書室にはパソコンは見当たらない。貸出・返却は図書委員がカードで運営。(調べ学習時には図書室以外の場所でパソコンを利用しているとのこと。)市立図書館との連携・協力が得られていることや月2回の学校図書館支援員の配置が済んでいることなどから公共図書館連携・学校間連携のシステム化はスムーズに移行できる状況にある。市への事業化を強く期待したい。

図書室紹介

図書ホール
子供たちがリラックスできるようソファーを配置している。
絵本の世界、黒い切り絵の「図書ホール」
窓一面が大きな切り絵で装飾されている。すばらしい!!
「さわぐち たまみさん」の企画コーナー
さわぐちたまみさんは盛岡市出身のエッセイスト・絵本作家。
昨年開催した岩手県学校図書館協議会の研究大会で講演された。
学年ごとにおすすめ本を10冊ずつ紹介
掲示物の内容、ポップのデザイン等がよく考えられている。
学校図書館支援員の「思い」がいたるところに表れている。「はらぺこあおむし」は絵本を飛び出し、図書室の壁をよじ登っていく。
こども新聞も配置
地元紙が発行しているこどもニュース
図書ホールカウンターは図書委員で運営
貸出カードは手書き。ただし、図書はきれいに整理されて
いるので、バーコード化、パソコン処理移行は容易。
「おすすめ本一人ニ冊プレゼント」
二戸市の独自政策。おすすめ本として選書された本の中から
好きな本、ニ冊がもらえる。
プレゼントされる本の展示。(手前)
この中から好きな本を子供たちが選ぶ。
「よみよみルーム」の配架の様子
主に卒業生からの寄贈された本が配架されている。 
畳のコーナーがあり、リラックスして利用できる。
二戸市の小学生用副読本「二戸市の先人たち」
郷土教育に関する副読本は定期的に改訂されている。  
ほかに「二戸市の自然」編も用意されている。

金田一小学校からのお勧め本

No 図書名 著作者 レコメンド 主な対象学年
1くらべてみよう!はたらく自動車(全5巻)市瀬 義雄のりもの図鑑をつくるために参考になる。低学年
2みずいろのぞうnakabanお話のクイズ作りに使える。低学年
3ちびドラゴンのおくりものイリーナ
ユルシュノフ
本の帯作りに適している。中学年
4ひみつきち高科 正信友だちとの感想交流に適している。中学年
5ひらめき美術館(全3巻)結城 昌子評論文をかくために参考となる。中学年
6ノエル先生としあわせクーポンジュジー
モルゲンステルン
友だちとの感想交流に適している。高学年

取材後記

今回の取材で岩手県学校図書館協議会(SLA)の活動にふれることができた。SLAの各県組織はさまざまな背景により、少々活動が停滞気味。(ホームページをみるかぎりではあるが。)しかしながら、昨年開催された研究大会は金田一小学校によい効果 (図書室の整備・充実や企画コーナーの設置等)を残している。外部から多くの方々が来訪されるケースは学校にとっても大切なお客様をむかえること。多くの地域、学校で研究大会を開催してほしい。
ここ、二戸地域では多くの起業家が育っている。Tスポーツ店を展開したT社(現在Xスポーツ社に経営統合)、ドラッグストアで急拡大したY社、介護ソフトウエアでNo1のW社など。なぜか?単なる地域的な偶然ではないと思う。決して経済的に豊かではない土地柄ではあるが、だからこそ、ハングリー精神ある起業家を育てた。そこに教育があったのではないか。そう思う。(菅原)

関連リンク