竹内利明氏

進化するビジネス・ライブラリアン講習会

竹内 利明 氏(たけうち としあき)

電気通信大学産学官連携センター 客員教授。
人を大切にする経営学会 副会長、地域活性化伝道師(内閣府)。
公立図書館が新たに地域の中小企業にビジネス情報等を提供する取り組みを支援する「ビジネス支援図書館推進協議会」を平成12年以来、22年間会長を務める。

COVID-19により社会生活は一変、図書館界にも大きな影響がありました。本協議会では2020年度の第20回ビジネス・ライブラリアン講習会(BL講習会と略す)からeラーニングに変更しました。準備段階では不慣れなため開催を危ぶむ声がありましたが、責任者である千葉経済大学短期大学部教授の齊藤誠一副理事長と事務局長を兼任する山崎博樹副理事長のリーダーシップのもと講師、事務局、そして受講生の皆様の協力により、想定以上の成果を挙げることができました。

2020年2月の第19回BL講習会(安城)は、対面で42名が受講しましたが、ぎりぎりでの開講でした。そして、理事会で協議して、すぐに第20回BL講習会をeラーニングで開講する準備を始めました。経験がないので周到な準備が必要と考えました。

eラーニングに対する抵抗感は、理事や講師にもありました。そこで、毎月1回理事懇談会を開催して協議を重ねました。第20回BL講習会は26名の受講でした。例年より3割ほど減りましたが、新しいシステムで開講するのには好都合でした。講義内容は対面講義とほぼ同じでしたが、録画した講義で学ぶリモート講義と、リアルタイムで質疑応答するオンライン講義を基本にしました。リモート講義で教育効果は格段に上がりました。受講生は分からないところを繰り返し学ぶので、理解が深まりました。また、講師は事前課題をリモート講義中に出題しました。受講生は課題に回答するために繰り返し学びながら、自らの頭で考えることができたので身についたのだと思います。更に、ワークショップは、アドバイザー講師の献身的な努力が実を結び、大変盛り上がり充実しました。その結果、受講生の修了レポートのレベルが高くなりました。従来は本協議会のサイトで5名程度の優秀レポートを公開していましたが、甲乙つけ難く、多数のレポートを公開することになりました。
また、これまで対面のBL講習会では受講することが難しかったという地方の小規模な図書館や子育て中の司書からeラーニングだから受講できたと嬉しい報告もありました。

2021年度の第21回BL講習会は、受講生が38名に回復しました。2022年度もeラーニングになりましたが、理事懇談会で前年度の振り返りと意見交換をしっかり行い改善をした結果、更に進化したと考えます。オンライン講義以外にも事前にワークショップ指定日を設けたので、受講生がある程度減少することを覚悟しましたが、35名の申し込みがありました。

BL講習会は、2004年に静岡で第1回を開講してから昨年度までに21回開講して累計の修了生が600名を超えました。修了生の多くは全国の公共図書館でビジネス支援サービスを提供する中核人財として活躍しています。また、本サービスは図書館における新しいサービスであることから初期の受講生が、その後講師として活躍していることも特長の一つになっています。修了生が中心となって考案した新しいサービスが多数あり、これが日本の公共図書館のビジネス支援サービスの標準になりつつあります。BL講習会では、これらのサービスを現場で苦労して具体化してきた講師から直接聞くことができます。また、近年の特長として、受講生を派遣する図書館がビジネス支援サービスを提供していなくても、新たに提供するために公費で派遣するケースが増えています。このようなケースでは、修了生が中心となって具体的なサービスの提供まで短期間で行われます。これは、実践的かつ具体的な講義となっているためだと考えています。

さて、来年度のBL講習会は、eラーニングに加えて対面講義を組み合わせた形式での開講の可能性を検討していきたいと考えています。これからも進化を続けるBL講習会に注目してください。