伊丹市立図書館 ことば蔵

2016年度 Library of the Year 大賞受賞館

(2017年2月24日 取材)

2016年度Library of the Year大賞を受賞した伊丹市立図書館は、 Library of the Yearで大賞を受賞するために、不断の努力をしてきた図書館である。図書館職員の力だけでなく、市民とともに図書館をつくり上げたことが、大賞に選ばれた大きな理由だ。市民と図書館が協力し合う体制は、どのように築かれていったのだろうか。

インタビュー

(敬称略)

ことば蔵の概要

ことば蔵の概要をご紹介ください。

【小 寺】

 前の図書館が40年間市役所の横にありましたが、老朽化と手狭になったのといろんな理由で2012年7月に駅前の方に移転してきました。市民の皆さんに愛称を募ったところ、清酒の発祥地で、元酒蔵があった場所でもあり、また、ことば文化都市として売り出していることもあって、ことば蔵という名前になりました。ことば蔵オープンに合わせて、市内在住の芥川賞作家、田辺聖子さんにお願いしまして、名誉館長に就任いただいています。

延べ床面積は約6,000㎡、大体小学校と同じような大きさがあります。コンセプトは公園のような図書館ということで誰でも気軽に訪れるようなことができる、市民と繋がるような図書館を目指して運営をしてまいりました。

蔵書冊数は現在約34万冊、将来的には最大40万冊まで収納可能です。ことば蔵には、図書館機能、交流機能、情報発信機能という3つの機能があります。1つめが図書館機能ということで、地下に20万冊収納可能な自動書庫がございます。これは兵庫県内で初めて導入になったのですが、それに加えて2階に児童書、3階に一般書と階下でおいています。こちらのほうは全てICタグで管理しています。

一般書のコーナーでは、一風変わった楽しい展示方法も見られた。
児童開架では大人の目がいきやすいところに本を面出しして配架し、
子どもの手が届きやすいところには本を立てて配架している。
シールの意味が簡潔に書かれており、分かりやすい表示。
ヤングアダルト向けの新着展示では、おすすめのキャプションを合わせて掲示している。

【小 寺】

2つ目の交流機能は、1階の交流フロアで行っている事業で、これが結局中心市街地の活性化の役割を担っています。

情報発信機能というのは、伊丹の歴史とか文化(酒蔵の歴史やことば文化)そういった文化を発信するための機能ということで、大きく3つの機能がございまして、フロアは地下1階、地上4階建てになっております。

カウンターの上にあるサイネージには、市民に向けた情報発信が行われている。
学習室の満席情報が確認できるウェブサイトを用意している。

交流フロアの運営会議

ことば蔵の特徴をお願いします。

【小 寺】

市民力を最大限に活かすシステムということで、1階に交流フロアというものを設けて、何をするところかというと、まさに皆さんに公園のようにしてもらう場所として、フリースペースで飲食も会話も可能なスペースになっています。この公園のような図書館を実現するために、市民の皆さんの意見を取り入れようということで設置したのが、交流フロアの運営会議で、毎月第1水曜午後18:30から開催していて、誰でも参加可能で、予約も特に不要なので自由な会議になっていまして、この運営会議で皆さん自由に意見を出し合ってそれが年間200回を超えるイベントに繋がっていっているという、これが全ての核になっている会議です。

運営会議のルールも本当にシンプルで、まずは無料であること。開催費が無料ということで、全てみなさんボランティアで企画していただいています。もちろん参加する側も無料で、材料費はいただく場合もありますが、基本的にみなさん無料で企画・実施していただいています。

公園のような図書館を目指しているので、市外の方でも結構ですし、図書館の利用客に登録していない方でも誰でも参加できます。

本やことばにつながるということ、このイベントをきっかけに読書活動につなげてもらうということ、本やことばには必ずつながるような企画という、この3つのルールを満たしたものをみんなで話し合い、企画しているという運営会議を毎月行っております。

カエボン活動(1)

【小 寺】

カエボンという開館当初から行っている活動ですが、カエボン棚というものを設置していて、そこには皆さん、市民の方のおすすめしたい本、ぜひ読んでほしい本を棚のほうに寄付していただきます。そうすると、他の人がおすすめした本と交換できるような仕組みになっています。特徴としては、自作で作った本の帯と感想カードをつけるようにしているので、この2つによって、皆さんの本にこめる思いを共有していただくような仕組みになっています。ルールはほとんどなく、市民の皆さんの善意で運用しているので、登録もいらないですし、貸出期間もない。1年後でも2年後でもいいから、いずれ本を返してもらうというシステムにしております。こういった中で一部の方から、本が減るのではないかとの心配もあったが、最初0冊から始まって、現在は600冊ほどに増えているので、逆にこのルールを作らなかったことが広まった原因かなと思っています。設置個所もことば蔵1か所だったのが、いまは市内4か所に増えていて、全域に広まっていっているかたちです。

カエボン棚には本がたくさん置いてある。

このカエボン棚は常設しているのですが、月一回だけカエボンの部活動という位置づけでイベントのようなことをしていて本の交換会ですが、毎回テーマを決めて、皆さんに本を持ち寄っていただいて、その本の紹介を通して交流いただいて最後、気の合った方で本を交換してもらうというイベントを開催しています。基本的にはことば蔵を拠点にしていますが、市内の書店など色々なところに出張開催しています。