大阪産業労働資料館 エル・ライブラリー

2016年度Library of the Year優秀賞受賞館

(敬称略)

【谷 合】

たまに、利用者から非常にうれしいことを言ってもらえます。ある時、メールで「エル・ライブラリーの資料のおかげで弁護士なしても労働委員会で会社と対等に渡り合えて、満足のいく結果が得られました」と言われて。やっぱり、お金がない、組織がないという人のためにあるのが図書館だと思っているのでこのようなメールをわざわざ送ってくださって、すごくうれしいですね。リピーターで来られる方も何人もいて、「この間いろいろと教えてくれたあの人にもう一回聞きたい」みたいな形で来られて、2回目のときにたまたま私がいなかったので、スタッフが「また来てください」と答えました。そういう時は申し訳ないなと思います。公共図書館としては均質なサービスをしなければいけないと思いますが、私がいたらレファレンス出来るけど、いなかったら出来ないのではダメなので、難しいなとその時は思いました。結局、人マターのところはあります。

昔使われていたパスポート。
この一枚の紙に、たくさんの情報が集約されていることが、谷合館長の解説を聞くと分かる。
「要求書」と「嘆願書」のレプリカ。
「この資料にどんな思いが込められているのかは、筆跡からわかるんです」と谷合館長は語る。
水俣秒が発生した地域の様子をまとめた地図。

人がいなかったらITシステムだけになってしまうけど、それでは不十分な所は残るのですね。
データはシステム化できても、人脈はできませんから。

【谷 合】

本当にそうですね。でもデータベースって私たちだっていくらでも普段使っているわけだから。それは本当に役に立つし、AIはそれが人間よりも賢く構築してくれるんだったらAIは本当にいいですね。

橋下知事の時代に、産業技術史博物館を作るために集めた産業資料2万点が捨てられてしまったことがあります。でも捨てる神あれば拾うエル・ライブラリーありということで、拾いに行きまして。この写真が運び込んでいるところです。こんな感じでうちはとにかく文献資料を中心に段ボール200箱を搬入しました。これは後の整理が大変でした。

捨てられた産業資料2万点を、館内に運び込んだ。

整理にどれくらいかかったんですか?

【谷 合】

3、4ヵ月かかったかな。でもだんだん減っていくわけだから、一か月くらいで半分になるじゃないですか。それでいらないものもいっぱいあったんです。内容を確認する余裕もなく全部運び込んだから、いざ箱を開けてみたら使いようのない資料もあって、学会などに引き取ってもらったり、最終的に廃棄したものもあります。この工具もね、なにかわからないけどとにかく貰ってきました。産業技術史学会の先生も何かわからないとおっしゃって、本当に困ってしまいました。ちょうどその時にエル・おおさかのギャラリーでメーデー記念展という展示会をしていて、これを片隅に「何かわかりませんが、産業資料であり、廃棄されそうになったものを拾いました」というキャプションを付けて置いておいていたのですが、分かる人がいました。私の父。

何か分からずとも、資料として収集した工具。

ちなみに何だったのですか?

【谷 合】

ろくろ旋盤の工具。手作り工具で、実際うちの父親が使っていたのとほぼ一緒だと言われて。使い方が全部わかるというから、急所これのレクチャー会をやりまして、産業技術史学会に先生たちに来てもらって父がその場で実演して。この様子は全部動画に撮って、いまyoutubeに上がっています。でもこれはここで持っていても使えないから死蔵してしまうことになるので、2年前に尼崎市立文化財収蔵庫に引き取ってもらいました。あの時もし捨てていたら、もうそれで終わりっていう史料でした。

いろいろな手段で広報活動

【谷 合】

普段から広報を一生懸命やっています。広報の媒体が、電子、紙、人間をフルに活用しています。私が大阪マラソンに出て、走る広告塔で職員がのぼりを持って、私の応援団が一緒について回るという広報です。私かなり遅いので、6時間40分かかりましたが、応援団は電車に乗って、ポイントポイントで降りて、私が来るのを待っていてくれていました。背中にエル・ライブラリーとか、頭にSAVE MLAKとかつけて。ブログに大阪マラソンでますと書いたらブログの閲覧者が2倍とか3倍に跳ね上がりました。

”大阪マラソン””初心者”というキーワードで検索をかけている人がいっぱいいてうちのブログがヒットしたようです。だからエル・ライブラリーなんて知らない人が、こんな図書館があるのだと分かって貰えて、これは広報的には成功したなと思いました。

エル・ライブラリーのためにマラソンに参加された谷合館長。

れいこちゃん記念文庫

【谷 合】

れいこちゃん記念文庫っていうのを少し紹介します。れいこちゃんは小児がんで亡くなってしまいましたが、ちょうど私が大阪マラソンを走るときに、手書きの応援メッセージとクッキーを届けてくれたんです。亡くなった1年度のれいこちゃんの命日に、れいこちゃん記念文庫というのを立ち上げました。ここ小さいライブラリーですが、れいこちゃんの闘病を支えたNPOの資料を収集して発信するということをやろうと思いました。ここにカンパ箱もおいていて、お金を集めて、チャイルド・ケモ・ハウスという闘病中の家族が一時的に寝泊りできる家があるのですが、それを作っているNPOがあって、そこにカンパを集めているということもやっています。

支え合う

【谷 合】

私たちの基本の考え方というのは支えあう社会だと。図書館というのはそのためにあるものだと思っています。レファレンスの力によって利用者を支えるし、市民が寄付したり、ボランティアをしてくださったりして、この図書館を支え、我が館の優秀なスタッフが暴走館長を支えてくれ、私が金策に爆走する。あらゆる資源を動員して広報に努めて、ボランティアスタッフが運営を支えてくれているというのがエル・ライブラリーということです。支えあうことは、もたれあうことじゃなくて本当に助け合うことです。だからまず自分たちが誰かを助けると思わないと、誰も助けてくれません。そのためには自分たちが先にその人に何ができるかを考えないとダメだといつも言っています。私たちが補助金を全廃されたときに、いろんな人が助けてくれたというのは、それまでに培った人間関係とかネットワークがあったからだと思うのです。

そういう危機の時って本当の人間関係がわかりますね。

【谷 合】

そうです。いろんなことが起きてくるのを、次々と乗り越え、押しのけみたいな感じでどうにかここまで来ました。

エル・ライブラリーには、表彰状をはじめ様々なお祝いの品が飾られている。

いろいろとたくましくなったんじゃないですか?

【谷 合】

体力はつきましたよ。マラソン走るとか、以前は思いつきもしませんもん。

職員は、今、何人いらしゃるんですか?

【谷 合】

正規の職員は二人。館長と館長補佐だけが正職員。私は法人の常務理事なので、役員と職員を兼務で。それに非常勤の職員がいますが、もう25年以上働いているので、すごく有能なんです。英語も同時通訳できるぐらい話せるので、英語サイトも作ってくれるし。

いろいろと支えられてもいますね。こういうのって企業協賛とかあるんですか?

【谷 合】

協賛というか、大手企業には大口のサポート会員になってもらうように労働組合を通じて頼んでいて、何件かはなってくれています。一口5,000円というところを何十口といれてくださる大手の企業会員もいます。でも担当者が変わったりして引継ぎできていないとかあります。何しろ自分たちの生活がかかっていますから、頑張って営業活動しています。

これだけいろんなことをされているんだったら、この仕事をもっと広く見せるのが確かに大事になるということがお話を聞いていてよく判りました。
今日はお忙しい中、いろいろとありがとうございました。

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