小林隆志氏

公共図書館の学校図書館支援について思うこと

小林 隆志 氏(こばやしたかし)

平成15年県職員・司書職として採用される。
採用初年度からスタートした館内のビジネス支援事業に関わり、平成18年度には新設・増員された、くらし・産業支援担当副主幹となる。平成19年度より現職。

平成27年より同志社大学嘱託講師 / 公益社団法人日本図書館協会 認定司書No.1043 / 公益社団法人日本図書館協会 最初の代議員(2012-2017年度代議員・個人)/ ビジネス支援図書館推進協議会副理事長 / 図書館サービス向上委員会りぶしる委員 / NPO法人キャンサーリボンズ委員 / 関西ネットワークシステム中国支部世話人 / メビック扇町エリアサポーター

<著書等>
・分担執筆:『ささえあう図書館』(勉誠出版 2016)
・分担執筆:『現場発、産学官民連携の地域力』(学芸出版社 2011)
・分担執筆:『一人ひとりの読書を支える学校図書館―特別支援教育から見えてくるニーズとサポート』(読書工房 2010)
・分担執筆:『課題解決型サービスの創造と展開』(図書館の最前線3)(青弓社 2008)

平成27年4月に鳥取県立図書館内に学校図書館支援センターが設置され、小中学校課と高等学校課、それぞれの指導主事を兼務する職員2名が配置されました。これを機に鳥取県立図書館は本格的に学校図書館活用教育の充実へ向けて動き始めました。この経験から見えてくる学校図書館支援について、自分なりの考えを書いてみたいと思います。

学校図書館活用教育充実のために必要なことは何なのか。それは、学校図書館に必要な資料が揃い、それを案内できる司書が常駐することです。公共図書館の学校図書館支援は、将来的にこの環境が整備されることに寄与するものでなければならないと思っています。
よく、公共図書館の学校図書館支援の報告を聞きますが、本来授業に必要な基本図書まで相互貸借に依存しているようなことはないでしょうか。それは、学校図書館の資料の充実につながるのでしょうか。もちろん、今現在いる児童生徒の学びを保障するために、基本資料であっても、足りないのであれば借受けしてでも補わなければならないことはわかりますが、これを毎年繰り返しても、いつまでたっても学校図書館の資料は充実しません。その場しのぎの相互貸借を繰り返すしかないのです。大切なことは相互貸借に過度に依存することではなく、各学校の図書館に、授業に絶対に必要な資料をきちんと揃えることです。足りない資料は何なのかをリスト化し、学校内で、あるいは教育委員会に対してその状況を明らかにし、必要な資料費を確保していくことです。このことを理解したうえで、足りない資料を取り寄せる相互貸借も活用していく、という姿勢・気持ちが必要だと思います。

誤解の無いように付記しておきますが、公共図書館が学校図書館を支援すべきではないと言っているのではありません。生徒の主体的で対話的な深い学びや多様な情報要求に応えていくためには、学校図書館だけでは難しい状況にあるというのは理解しています。この部分の貸し借りを否定しているわけではありません。むしろどんどん活用してほしいと思っています。問題は、本来揃っていることが望ましい基本図書にあります。

資料の相互貸借に「支援」とか「連携」という言葉が使われますが、過度に依存している事例、支援・連携しているつもりになっている事例、支援・連携することが目的になっている事例などいろいろな場合があるのではないでしょうか。それぞれの図書館がそれぞれの役割を果たすために努力し、足りないところを補い合うという本来の関係性を意識する必要があると思います。鳥取県では、この考え方を肝に銘じて、毎日必要な図書を届ける物流システムを稼働させています。

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