紫波町図書館
2016年度 Library of the Year 優秀賞受賞館
(敬称略)
こんびりカフェ
【工 藤】
今はこんびりカフェという取り組みがメインです。農閑期にやるのですが、農家の方を集めてお茶を飲み、おやつを食べながら雑談をするんです。雑談と言ってもその時のテーマがあり、テーマに沿ったゲストをお招きしてちょっとお話をしていただいて、そのテーマでやり取りをする2時間ですが、農家の方々の息抜きになっていると思います。よその農家がやっているノウハウ等を知ることができて、刺激になる。こんびりカフェとは直接関係ないけれども、若手農家が中心となって、色々なイベントをし始めている。そういった取り組みをしようとする心の動きに、影響を与えているんじゃないかなと思っています。
例えば紫季のマルシェという取り組みを行っていて、今年の1月は銀座のアンテナショップでやりましたし、司書も参加しました。そういうことを少しずつだけど取り組んでいけるといいなと思っています。
それは行政と直接一緒に何かイベントをしているわけではないんですか?
【工 藤】
担当は農林課と農林公社です。2つのバックアップもあるけれども、実際に、イベントに参加する若手の農家さんにやる気がなければできないことなので。そういうやる気に繋がっているんじゃないかなと思います。
最近は出張としょかんというのを試行的にやっています。紫波町は東西に長くて面積が広いのですが、そこに公共図書館がたった1つしかないんですね。来館できない方がかなりいて、移動図書館が巡回していますが、そういう方たちにとって、図書館というのははじめから意識の外にあります。そういう方々にも図書館の情報を届けたい、知ってもらいたいということで、出張としょかんを始めました。去年は西の公民館と東の公民館の2箇所で2回ずつ、農文協さんからDVDを提供していただいて、野菜作りをテーマに、農文協さんに説明していただきました。そういう取り組みをしたら、町外を含めてたくさんの方がいらっしゃいまして、4回とも50人以上参加していただきました。公民館にこれほどまでの人が集まるとはと言われるくらい盛況があったんです。「あ、図書館ってこういうこともやるの!」と言われます。
独特なユニフォーム
ここはすごく司書の方々が生き生きと働いている印象があります。ユニフォームも素敵ですね。
【工 藤】
実は、それが肝だったんじゃないかなぁとすごく思っているんですよね。司書の立ち振る舞いと明るくいい声で、笑顔で、出来るだけ声掛けをするというのは毎回注意しています。すべての図書館に行ったわけではないのですが、賑わっている図書館はわりとそういう傾向がある気がします。近隣の図書館をみると、静かな雰囲気で、確かにみんな小声になりますね。
ユニフォームはエプロンでなく、作業服でもありません。そういうものだと、司書のプライドを傷つけてしまうのではないかと私は思います。
図書館員が外部で講演するときにも、ユニフォームを着て講演されているんですね。講演するときにも、わざわざ自分たちの制服みたいなものを持って行って、それを紹介することから始める。そんな図書館ってないです。
【工 藤】
やっぱり主任司書の手塚の影響が大きいと思いますね。山崎さんのご紹介をいただいて、図書館を立ち上げる準備の段階から参加してもらいました。彼女の経験とノウハウと接客のスタイルというものがやはり肝になっていると思うんですね。それをいかに他の司書が真似をして、自分のものにしていくかが課題です。
施設名がオガール※ですからね。利用者も育って、職員も育っていくというのが理想ですね。
参考
(オガールとは、フランス語で駅を意味する「Gare」(ガール)と、紫波の方言で【成長】を意味する【おがる】を合わせた造語で、この地域を出発点として、紫波が持続的に成長していく願いが込められている。)
【工 藤】
紫波町図書館がよいって言ってくれる人は必ず司書のことをあげます。特にレファレンスの対応など、困っているときにこんなに情報を提供してくれるんだとか。それはやっぱり大きいと思います。なんとか自分がいる間にもう少し図書館の基盤が固められればと思っています。来年度は踏ん張りどころです。
図書の見せ方にこだわって、例えばポップなどは全部イラストレーターで作っているそうですが、デザインをできる方がいらっしゃるんですか?
【工 藤】
オガールプロジェクトのスタートが、デザイン会議というところから始まっているんですね。ここの土地はオガール10.7ヘクタールという公共用地、町民の財産なわけで、ここをどのように活用するかということから始まったわけです。それは町の財産だから土地の価値を高めることが、町民の財産を高めることになる。でも「土地の価値を高めるってどういうことなの?」とそれを考えたのがデザイン会議なんです。6人のメンバーと、もちろん町からも加わっていますが、そこにアートディレクターがいて、細かい部分のデザインを一緒にしていきます。デザインガイドラインの考え方を紫波町図書館も取り入れていくということで、ロゴマークのカラーも鉄紺にしました。ですから立ち上げの時には館内サインからなにからアートディレクターに相談をして、それを受け継いできた。最初の頃はかなり大変でした。今も大変ですけどね。
今は職員さんが作成されているのでしょうか?
【工 藤】
そうです。全部司書がやりますよ。頑張って作っています。これがクオリティコントロールってことなのだろうと思いましたね。私はあまりそういう経験がないので、どこかで妥協してしまうというところがあるけど、良く言えば「決して妥協しない」。悪く言ったら頑固なところがちょっとあるかもしれない。でもそれが図書館の一定の質をキープするという、そこが重要なのだろうと思います。
図書館にとって施設や資料は大事なことですが、紫波町の図書館に来ると、なぜか来館者の顔が幸せそうに見えます。このことは職員の絶え間ない努力と住民のつながりの中から生まれてきたということを、取材を通して実感することができました。
〒028-3318
岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前2丁目3-3 オガールプラザ中央棟1F
【電話】019-671-3746(みんなよむ)
【URL】http://lib.town.shiwa.iwate.jp/