新潟県 新潟市立松浜中学校

2016年度の平均貸出冊数が15.4冊となった松浜中学校。どのような工夫をされてきたのか、お話を伺いました。

(2017年7月13日 取材)

学校情報

所在地:〒950-3126 新潟県新潟市北区松浜5-12-2
電話:(025)259-2106
E-mail:j101matsu1@city-niigata.ed.jp
学校HP:http://www.niigata-matsuhama-j.city-niigata.ed.jp/
設立:1947年(昭和22年)5月15日
生徒数:341名 学級数:12学級 教職員数:34名
学校司書:1名(平成29年 現在)

教育目標

 進んで学び 力を合わせて やりぬく生徒

  • 進んで学ぶ:授業、諸活動、部活等多様な場面で積極的に自分を伸ばそうとする
  • 力を合わせる:周囲の人たちの支えに気付き、進んでかかわり、役割を果たそうとする
  • やりぬく:安易な方向に流されず、継続的に努力して自己実現を目指す

学校図書館 基本データ

学校長インタビュー

取材に対応いただいた
校長 岡田 聡 様

-本日はお忙しいところありがとうございます。はじめに、読書の取組状況についてご紹介ください-

 次のような取組を行っています。

  • 図書館利用のオリエンテーション(図書館の利用方法をレクチャー。年度の初めに全学級で実施)
  • 掲示物の作成や、図書館だよりの発行(本の紹介など、図書館の情報を周知する)
  • 語りの会(市立図書館で語りの勉強をされたボランティアの方がチームで来校して、読み聞かせを行っている)
  • 朝読書の時間(集会がないときには、学校全体で実施している)

これらの取組以外にも、司書教諭の岡本先生と学校司書の鈴木さんが、さまざまな企画をし、図書館利用の活性化を図っています。

図書室前の階段の踊り場にある掲示板。
図書だよりを、先生と生徒の2つの目線で作成。

-色々な取組をされているのですね。どのような成果が表れていますか-

昨年度の平均貸出冊数は生徒一人あたり15.4冊となり、新潟市全体の平均貸出冊数を大きく越えました。生徒たちの読書に対する興味も、着実に上がってきていると感じます。

-素晴らしいですね。学校司書さんの役割も大きかったのでしょうか-

非常に大きいと思います。企画を練って実施してもらうなど、大きな動きに目を向けがちですが、鈴木さんは細かい点にも気を配ってくれるのです。

例えば、図書館の本棚。本棚に本がびっしりと並んでいると見栄えがいいと思っていましたが、隙間があったほうが本を取り出しやすいと指摘してくれたのです。「なるほど」と感じました。ですので、当校の図書館の本棚には、すべて隙間をつくるようにしているそうです。

また、鈴木さんの性格も非常に明るい。生徒たちが鈴木さんに接しやすいというのも、生徒たちが本を積極的に読むようになった要因の一つとなっているのではないかと感じています。

書架の棚版に、滑り落ち防止シートを貼り、転倒・落下防止に配慮。
ゆとりをもって本を排架。

-中高生の読書離れが叫ばれています。その背景には、スマートフォンの普及やSNSの流行があると思われますが、読書との関わりについてどのようにお考えですか-

SNSでは、メールに既読がついてしまうため、すぐに返信しなければなりません。これが、スマートフォンを手放すことができず、読書離れに拍車をかける一因になっていると感じています。

学校側でも、「携帯電話は中学生には不要」とお話ししていますが、すっかり普及してしまっているのが現状です。その現状を受け、例えば「時間を区切って使おう」とも呼びかけていますが、それもどこまで効果があるのか、不透明です。

SNSの一番の難点は、短文で会話が成立してしまうことでしょうか。短文でのやり取りになってしまうため、長文読解や作文の力が落ちてしまうのでは、と危惧しています。

-ありがとうございました-

司書教諭 岡本先生と学校司書 鈴木さんへのインタビュー

(左)司書教諭 岡本敏之 様
(右)学校司書 鈴木妙子 様

-校長先生のお話にもありましたが、昨年度生徒一人あたりの貸出冊数の平均が15冊を越えたそうですね。素晴らしいです-

【鈴木司書】

当校に入学してくる生徒たちには、小学生のときに本を読む経験を積んできた子が多くいます。中学生になっても、その習慣を途切れさせず、引き続き本を読んでほしいと思っていますし、そのために色々な工夫を行っています。

-例えばどのような工夫を? -

【岡本先生】

例えば新学期に新1年生が入学してくるときには、小学校ではどんな本が人気だったかを鈴木司書が小学校に問い合わせて、その傾向をつかむようにしています。

【鈴木司書】

また、同じ校区の小学校から、図書だよりを頂いて、人気の本がどんなものだったか、どんなイベントを行ったのかを把握しています。逆に、こちらからも図書だよりを送付していて、頻繁に情報交換をしています。

【岡本先生】

それだけでなく、読書週間に合わせて、先生たちのおすすめ本を紹介することもしています。紹介が終わった後も、本にしおりを挟んでおくことで、後から生徒たちが参照できるようにしています。

【鈴木司書】

生徒たちも先生がどんな本を読んでいるのか、すごく興味があるようです。先生側も下手な本を紹介できないから、妙な緊張感があるみたいです(笑)。

紹介文の依頼をすると、先生方に敬遠されてしまうので、
ズバリ、簡単に「おすすめの本」を聞いている。
その本にしおり形式にして挟み、紹介。

-市では様々な制度で学校図書館を支援しています。どのような考えを持っておられますか-

【鈴木司書】

司書の勉強会が年に5回前後ありますし、研修も多くあります。図書委員会の取組や、その他いろいろな情報を、他の学校司書さんと共有する場になっています。例えば、ブックコートフィルムのかけ方は実際に勤務してから初めて行う作業なので、他の学校司書さんとのつながりがあると、本当に心強いです。

【岡本先生】

市内の図書館担当の教諭間でも、図書館教育部会という研修が年に2回ほど行われていて、外部の方をお招きしたり、先進的な工夫をされている司書さんのお話を伺う機会があります。他の学校や図書館に伺うこともあり、見学するだけでも非常に勉強になります。

ー ここで、図書委員の生徒さんにお話を伺いました ー

-普段はどのような活動をされていますか? -

カウンター当番を行ったり、本棚の整理を行っています。また、図書館関連の掲示物を作成したり、週に1回の校内放送を通じて、お勧めの本を紹介しています。

図書委員になったら必須の本の紹介カード(又はPOP)。
イラストを入れ、あらすじ、すすめる理由、図書番号を記入。

-校長先生からお話しがありましたが、スマートフォンやSNSが非常に普及していますね。そういったものを頻繁に使っていますか? -

そもそも携帯電話を持っていないので、そういったものとは無縁な生活を送っています。空いた時間には勉強したり、本を読んだり、テレビを観ています。

-とても意外なお答えです。失礼ですが、お友達から携帯電話を持っていないことを指摘されたりしませんか? -

そういったことはありません。それに今年は受験する年なので、携帯電話を持っていても勉強の邪魔になると思っています。今は欲しいとも思わないですし、必要性も特に感じていません。

-皆さま、本日はありがとうございました-

松浜中学校からのおすすめ本

図書名 著作者 レコメンド(簡易な推奨文) 主な対象学年
1オリンピック・パラリンピック大百科全5巻 オリンピック、パラリンピックともに掲載されていて、まず最初に調べるための資料として重宝した。1年生
2写真で読み解く俳句・短歌・歳時記大事典 比較的新しい資料なので、現在使用している国語教科書に掲載されている作品が多く良い資料だった。2、3年生
3OLIVE いのちを守るハンドブック 防災教育学習で使用。他の学習用資料には、あまり記述がない事柄が多く掲載されていた。「身の回りのもので作れる超実用的なアイディア」と銘打っている。防災拠点となる学校に、1冊あるといいと思う。3年生
資料名 著作者 レコメンド(簡易な推奨文)
1北区のお宝ものがたりお宝ものがたり編集部:編集学校周辺の地域情報がまとめられている。新潟市北区の小・中学校に所蔵されている資料なので、1人1冊ずつ用意することができる。
2北区のお宝ものがたりガイドマップお宝ものがたり編集部:編集上記資料とともに利用している。実際に校外に出る時に、携帯しやすくわかりやすい。

図書館の様子

世の中の出来事や話題として
新聞などに取り上げられた記事を紹介。
学年ごとの貸出送冊数をグラフで表示。
月ごとの集計も併記。
図書室に入ってすぐの机の上の特設コーナー。
話題本、おすすめ本などを紹介。
カウンター上に新聞を平積み。
常時、自由に1か月前までの記事を閲覧可。
3か月はカウンター下に保管している。
季節に合わせた書架上のPOP。
これも図書委員の作。
図書委員会企画 「図書館クイズ」。
図書に関心を持ってもらい、図書館利用促進がねらい。
図書委員会企画 いろいろな企画物の回収箱に変身。
今回は、図書館クイズ回収用に。
各教科・総合でも活用しやすくまとめて排架。
キャリア・防災・郷土・入試・国語の教材関連などのコーナーがある。

取材後記

今回は初めての取材同行。新潟市の緑豊かで穏やかな風景、夏の日差しに照らされた昼下がりの校舎、元気に挨拶をしてくれる生徒さんたち、校長先生をはじめとする先生方へのインタビュー。すべてがとても新鮮であり、印象深い出来事であった。

その中でも最も印象深かったのは、図書委員をされている生徒さんのお話だ。記事にも記したが、携帯電話をもっていないことに対し、「今年受験があり、携帯電話は邪魔になるので、欲しくもないし、必要性も感じません」と明朗な口調でお話ししてくれた。筆者が同年代の時には、携帯電話を非常に欲しがっていたことを思い出し、穴があったら入りたいような非常にいたたまれない気持ちとなった。

また筆者も本を読むほうなので、取材後にお勧めの本を聞いた際には、はにかみながらも本を紹介してくれ、非常に嬉しく感じた。

SNSやスマートフォンが全面的に悪いわけではない。それらは瞬時に多量の情報を伝えてくれる、素晴らしく便利なツールである。しかし今回の取材を通じて、本を手に取り、活字とじっくりと触れ合う時間の必要性や大切さを改めて感じることができ、とても勉強になった。このような再発見をこれからも大事にしていきたい。

(西岡)